ちょいKARA
メーカー | タイトー |
対応機種 | アーケード |
ジャンル | カラオケ |
ちょいKARAは、タイトーが2011年に発売した、アミューズメントカラオケBOXです。
当時から需要の高まっていたヒトカラを後押しするツールとして、未だに根強い人気を誇っています。
目次
最低限ここだけでも読んで頂きたい項目には「★」、出来れば合わせて読んで頂きたい項目には「☆」が付いています。
それらを読んでもなお飽き足らないのであれば、末尾が空欄の項目も是非読んで下さい。
ちょいKARAの概要を解説します。
ゲーセンの喧騒を無にする、ちょいKARAならではの抜群の音響空間を解説します。
片手で数えられる程の店舗にしか導入されていない、ちょいKARA。その理由を考察します。
これまでの解説を踏まえ、ちょいKARAがどんな内容で、どんな良さがあって、どんな方に向いているかを解説します。
文字通り、ちょいKARAに関する、個人的な思い出話です。
本ページと何かしらの関連性や共通点を持つコンテンツを3つ紹介します。あと掲示板もどうぞ。
本ページについての、あとがきです。
ゲーセンには娯楽施設としては致命的な欠点があります。それは78dbもの喧騒で、プレイ中のゲームの音が殆ど聴こえない点です。
ライブで例えるなら、ステージでSMAPが「世界に一つだけの花」を歌っているとします。
そのすぐ横、つまりSMAPが歌っている最中に同じ空間で、AKBがヘビロテを歌って踊るようなものです。
その最中すぐ横で、XJAPANが紅を演奏している最中すぐ横で、福山雅治が「家族になろうよ」を弾き語っている最中すぐ横で…。
普通、ライブでこんな事態になるはずがありません。どの曲も聴き取れないノイズまみれのライブなど、間違いなく暴動が起きます。
しかし、ゲーセンでは、これが普通なのです。ライブでは異常だと、誰もが考えるような事態が、です。
それが一般の方々をゲーセンから遠ざけている点は、近年のマイボイスコムのアンケート結果からも伺えます。
当然、ゲームメーカーも、この点を問題視してか、時代を経る度に、それなりに対策を施す傾向にあります。
防音板を販売したり、密閉型のpod筐体を復活させたり、ゲーム機にヘッドホン端子を付けたりしている点が、そうです。
しかし、いずれも根本的な解決とは程遠いのが現実です。
pod筐体やヘッドホン端子に対応したゲームは少なく、ヘッドホンで喧騒を掻き消そうとすると、音の大きさに耳を痛めがちです。
また、防音板も単に横に置くだけであるため、無いよりマシ程度の防音効果しか期待できませんでした。
よって、せっかくの喧騒対策も、ゲーセンの喧騒の前には焼け石に水、と言わざるを得ないのが現実です。
その中でも、喧騒対策としては一つの完成系と言える程、ちょいKARAは抜きん出ています。
昔ながらのカラオケボックスを思わせる筐体に入ってドアを閉めると、そこはゲーセンの喧騒が非常に小さい楽園です。
もちろん、曲をかければゲーセンの喧騒を無にして没入できます。音量調節も出来るので耳にも優しいです。
さらに、カラオケなので、数千曲は下らないほどの膨大な数から、簡単に好きな曲を選んで歌う事が出来ます。
これは、カラオケ施設としては当たり前の事であっても、アーケードゲームとしては異例中の異例の、贅沢なプレイ環境です。
当時の時点で、アーケードゲームは家庭用ゲーム機に性能を抜かれ、もはや業界の最先端ではなくなっていました。
それを如何に筐体の豪華さや独自の操作デバイスでカバーしようとも、ゲーセンの喧騒によって台無しとされていました。
おまけに、大型化した筐体により、ゲーセンに置かれるゲームが画一化されて共倒れを招く等、八方塞がりも良い所でした。
以上より、ちょいKARAとは、不甲斐ないゲーセンを一喝すべく送り込まれた、希望の象徴だったのです。
そんな、ちょいKARAですが、少なくとも公式サイトだけを見れば、出回りは悲惨という他ありません。
一応、5年経っても特集記事を組まれ、地方の温泉施設やカラオケ施設にも置かれて人気を博している旨が綴られてはいます。
それでも、稼働当初からして10店舗ほどしか記載がなかったのが今や半分、しかも8割が東京都です。
この点だけ見ると、とても特集記事のような盛り上がりは感じられないし、出回りの悪さに頷ける3種類の敗因も考えられるのです。
第1の敗因は、1曲100円という価格設定です。
仮に1曲あたり5分と考えると、1時間で10曲は歌える計算となります。そして、カラオケ施設の相場は1時間300円です。
確かに、ちょいKARAには、ヒトカラの抵抗感や、歌うまでの煩わしい手続き等どこ吹く風で歌える、という利点はあります。
また、1時間もいて10曲も歌う気はない、1〜2曲だけ歌えれば十分、という方には、むしろ安上がりである点も、また事実です。
それでも、ちょいKARAでは、1曲あたりで換算すると、カラオケ施設の3倍以上もの金が掛かるのです。
いくら手軽さ重視といえど、この割高さを前に抵抗を覚えた方も少なくないでしょう。
第2の敗因は、あまりに乏しい独自性です。
アーケードゲームとしては異例の環境であっても、カラオケ施設と比べて秀でた部分はないし、やる事は結局ただのカラオケです。
おまけに料金も割高とあっては、ちょいKARAで歌うくらいならカラオケ施設に行こうぜ、となっても不自然ではありません。
せっかくアーケードゲームとして出すのですから、もう少しゲームらしい要素を盛り込んでも良かったのではないでしょうか。
例えば、カラオケバトルのような採点だとか、炎チャレのような歌詞の暗唱だとかで、成績が良ければ追加で歌えるとか。
そういった、ちょいKARAならではの要素があれば、よりカラオケ施設との住み分けが出来たかと思われます。
最後に、ゲーセンとのミスマッチです。
せっかくコスパを犠牲にしてでも手軽さを重視したというのに、主な出荷先がゲーセン、という点が実にミスマッチです。
ゲーセンは年間約500店舗のペースで減り続けている点からして、特に地方の方にとって身近な存在ではありません。
仮に近くにゲーセンがあったとしても、ちょいKARAのあるゲーセンは極僅かです。
仮にゲーセンに、ちょいKARAがあったとしても、歌う前後に78dbもの喧騒に耐えながら歩かなければならないのです。
つまり、手軽さ重視のちょいKARAで歌うには、物理的にも音響的にも全く手軽でないゲーセンに行かされる矛盾が付いて回ります。
自動販売機や電話ボックスのような感じで、屋外に多く設置すれば、ちょいKARAの良さを更に活かせたのではないでしょうか。
以上より、ちょいKARAは割高さと独自性の乏しさ、そしてゲーセンとのミスマッチにより、商業的には失敗したと思われます。
確かに、前述のように、そうでないとする特集記事もあります。
それでも、全国各地に普及させられず、ゲーセンの衰退を食い止められなかった点は、タイトーとしても不本意な結果のはずです。
ちょいKARAならではのポイントは2点あります。
アーケードゲームとしては異例の音響空間と、カラオケ施設にない手軽さです。
ヒトカラ特有の気恥ずかしい思いをしなくても、歌うまでの面倒な手続きをしなくても、筐体に入ってサクッと歌えるのです。
しかし、カラオケ施設と比べて割高な価格設定や、決して手軽でないゲーセンとのミスマッチが、足を引っ張った嫌いは否めません。
以上より、ちょいKARAは、既に設置店舗に入り浸っており、かつ1曲歌って息抜きしたい、という方にオススメです。
ちょいKARA自体の利用回数は決して多くはありませんが、ある意味で僕のゲーセン観を決定づけた、因縁のタイトルです。
その点は別の機会に詳しく述べるとして、この音響空間でアーケードゲームを遊べたら最高だな、と常々考えています。
それに対してバンナムから出された1つの答えが、近年のpod筐体の復活である、と僕は考えています。
最も、そのpod筐体を持ってしても、全てのゲーセンの喧騒を無に出来ている訳ではないのですが…。
といっても、中には喧騒が大好き、という方もいらっしゃるそうなので、好みは人それぞれですねぇ。
ところで、ちょいKARAの稼働時期が、ちょうど僕の就活と被っていた事もあり、ちょいKARAがあれば、と毎回思いました。
昼からの面接で、余裕を持って近くで昼食を済ませた後の待ち時間は、かなり手持ち無沙汰でした。
カラオケで、緊張をほぐしつつ待ち時間を過ごしたいと思っても、カラオケ施設へ行くには待ち時間が足りないのでした。
結果、緊張したまま面接に乗り込む羽目になり、上手く喋れず、お祈り…。ああ、ちょいKARAがあれば…。
という訳で、タイトーには極一部のゲーセンなどではなく、自販機みたいに、あちこちに置いて欲しかったものです。
最も、ちょいKARAで歌ったからといって、面接に受かるとは限りませんが。
ちょいKARA等を機に、タイトーに新卒エントリーした時に提出した、次世代汎用筐体の企画と、それにまつわる持論を語ります。
・スターウォーズ バトルポッド
映画「スターウォーズ」を原作とした3Dシューティングです。ちょいKARAと同様、手軽さと没入感を両立したゲームです。
・ダライアスバースト アナザークロニクル
モニターを2つで32:9の、超横長シューティングです。筐体にはボディソニックとヘッドホン端子もあり、高い没入感を実現しています。
検索等で来て頂いたついでに、ご意見ご感想などを残して頂けると嬉しいですが、事前に三か条を一読ください。
当初、本ページの思い出話で「僕は〜」の内容も盛り込む予定でした。むしろ、ある意味そちらが本命のつもりでした。
しかし、あまりにも、ちょいKARAと無関係の内容で重くなり過ぎるのも何ですし、時間もなかったため、分けました。
これまでVGFを見て下さっている方でしたら、ゲーセン云々の話について、今更釈明するまでもないですよね。
2016/09/30 「僕はタイトーでゲーセンを救おうとしていました」へのリンクを追加
2016/09/17 初公開