グラディウスII GOFERの野望
メーカー | コナミ工業 |
対応機種 | プレイステーション4ほか |
ジャンル | 横スクロールシューティング |
目次
最低限ここだけでも読んで頂きたい項目には「★」、出来れば合わせて読んで頂きたい項目には「☆」が付いています。
それらを読んでもなお飽き足らないのであれば、末尾が空欄の項目も是非読んで下さい。
グラIIの概要を解説します。
それまでのグラディウスシリーズが抱えていた難点。その改善を、いかにしてグラIIが試みたか考察します。
それまでのグラディウスシリーズで培われてきたステージ構成が、いかにグラIIで集大成として融合したか解説します。
より高いクオリティの追求の結果、重厚長大でマニア向けと化したグラIIの功罪を考察します。
グラIIならではの、達成感や様々な要素のバランスに秀でた作風を解説します。
PS4版の特徴や、それにまつわる出来事について解説します。
これまでの解説を踏まえ、グラIIがどんなゲームで、どんな良さがあって、どんな方に向いているかを解説します。
文字通り、グラIIに関する、個人的な思い出話です。
本ページと何かしらの関連性や共通点を持つコンテンツを3つ紹介します。あと掲示板もどうぞ。
本ページについての、あとがきです。
「グラディウスII GOFERの野望」は、コナミ工業がグラディウスの正統なパート2としてアーケードで発売した、横シューです。
初代グラディウスからグラIIまでの3年間、グラディウスシリーズは日進月歩でした。
まず初代グラディウスで、多彩なステージ群にゲージ式パワーアップ、そして規格外の火力などといった基礎が仕上がりました。
続いて続編の沙羅曼蛇で、更なるギミックや英語音声などの導入により、演出面で飛躍的な進歩を遂げました。
さらに、マイナーチェンジ版の「ライフフォース」で、一部システムをグラディウス寄りに戻す事で、更なるブラッシュアップを図りました。
そして1988年、それまでのグラディウスシリーズの集大成として、グラIIが姿を現したのです。
↓グラディウスの格調高さを感じさせるオープニング。
シリーズの基礎である反面、古めかしい初代グラディウス。古めかしさを和らげた反面、グラディウスらしくない沙羅曼蛇。
両者の良いとこ取りを試みた一品がライフフォースですが、まだまだ改善の余地が残りました。
そこで、グラIIでは、ライフフォースを持ってしても成し得なかった、4種類の改善を試みたのです。
第1の改善は、「パワーメーターセレクト」の導入です。
これは、ゲーム開始直後に、4つの武装と2つのバリアから好きなものを、それぞれ1つずつ選ぶ機能です。
良くも悪くも、ライフフォースの自機は、かなり尖った性能でした。
2方向に発射して地形を這うミサイルと、広範囲かつ高威力のレーザーによる圧倒的な攻撃力は、他の追随を許しません。
一方、自機を守るバリア「フォースフィールド」は、頑張れば全体を覆えますが、ただのハリボテなので、防御力は無いに等しいです。
他にも、後ろに撃てる武器がない、第2の武器リップルレーザー(リップル)がレーザーより弱く地味、といった問題点がありました。
また、前述した圧倒的な攻撃力も、悪く言えば更なる火力のインフレを招き、ゲームバランスを大味としていた、とも考えられます。
そこで、グラIIでは、パワーメーターセレクトの導入により、ライフフォースの自機が抱えた防御力や問題点の改善を図ったのです。
新生フォースフィールドは防げる弾数こそ激減したものの、確実に全体を防ぐため、実質的な防御力は激増しています。
「テイルガン」なら後ろにも撃てるし、大幅に強くなったリップルは、レーザーを押しのけて一躍メインストリームへと上り詰めました。
さらに、バランス重視、威力重視、広範囲重視、とタイプを分ける事で火力のインフレを抑え、ゲームバランスも改善されています。
最も有利とされる広範囲重視の4番装備にも、威力が低いという弱点があるため、人によっては辛く感じるかも知れません。
逆に、不利とされるレーザーであっても、使いこなせば時にリップルをも凌ぐ活躍を見せるほどのポテンシャルを秘めています。
以上より、グラディウスならではの自由度、ひいては奥深さを格段に高める存在、それがパワーメーターセレクトなのです。
以後、パワーメーターセレクトの概念は様々なゲームに引き継がれ、より幅広い層を引き込んでいく事となるのです。
↓1番は初代と同じだが、レーザーの大幅な弱体化により辛い武装に。
第2の改善は、「オプション」の挙動の修正です。
オプションとは、自機の分身となり、自機の後を付いて自機と同じ攻撃を繰り出す丸い物体です。
ライフフォースまでのオプションの挙動には癖があり、必ずしも自機の動きを正確にトレースする訳ではありませんでした。
これを逆手に取り、少ない動きで理想の陣形を組める一面もありましたが、かなり難しかったと言わざるを得ません。
まして、グラIIのステージの地形は、これまで以上に複雑です。癖のせいで上手く陣形を組めないのでは致命的です。
そこで、グラIIでは、オプションの癖を無くし、正確にトレースさせる事で、より理想の陣形を組みやすくしたのです。
以後、前もって癖のないオプションで陣形を組み、場を制圧する戦略性が、グラディウスに定着していく事となるのです。
↓正面を切れない?ならオプションに任せれば良い。
第3の改善は、「青カプセル」の弾消し効果の追加です。
青カプセルとは、カプセル12個出現後に現れ、取ると全体攻撃と弾消しの効果がある緊急回避のアイテムです。
ただ、初代グラディウスの青カプセルには弾消し効果がありませんでした。
そのため、撃ち返し弾が飛び交う2周目以降で下手に取ると、さらに撃ち返し弾が飛び交う事態となる問題点がありました。
これを受けてか、沙羅曼蛇やライフフォースで廃止されたものの、緊急回避の手段がない分、不利だった嫌いは否めませんでした。
そこで、グラIIでは、弾消し効果を加えた上で青カプセルを復活させる事で、ジレンマの解消に当たったのです。
以後、グラIIの青カプセルの概念は縦シューにおける「ボム」にも影響を与え、デファクトスタンダードと化す事となるのです。
↓初代グラディウスと異なり、死んでもカプセル数のカウントはそのまま。
最後に、オプションを奪うオプションハンターの投入です。
ライフフォースまでは、フルパワーの爽快感に秀でる反面、ミスしない限り一方的に敵を殲滅するだけで単調な嫌いがありました。
そこで、グラIIでは、オプションを4つ揃えた時のみ一定の間隔でオプションハンターを出す事で、単調さの改善を図ったのです。
最悪の場合、全てのオプションを奪われ、事実上の詰みに陥るため、フルパワーでもオプションハンターへの警戒が欠かせません。
逆に言えば、オプションが3つ以下であればオプションハンターが出ないのですが、それでは辛い場面もあります。
そこで、必要な場面でのみオプションを4つとし、それ以降は1つだけ取らせて3つのオプションで進む戦法が定着しました。
このように、オプションハンターにより、プレイヤーには2つの選択肢を迫られる事となります。
オプションを奪われるリスクを背負ってでも火力を優先するか、それとも少しの火力を犠牲にしてでも安定性を優先するか。
それはつまり、まず易しい後者でのクリアを目指し、それに飽きたら難しい前者を、といった具合に2度楽しめる事を意味します。
この概念は、ゲームの腕前で難易度を変える事で、初心者から上級者まで楽しめる「ランクシステム」へと発展する事となるのです。
↓例外として、6面では必ず出現しない。
以上より、ライフフォースまでの難点を改善した結果、グラIIは幅広いプレイスタイルを許容する高い自由度を得たのです。
パワーメーターセレクトやオプションハンターは、1回クリアして終わりでなく、段階を経て目標を定められる奥深さを生みました。
また、それに合わせて弱点だった防御力の低さ等も改善されています。
さらに、オプションの挙動の癖を無くす事で、オプションを使いこなす楽しみが増しました。
ついでに、全体攻撃の青カプセルに弾消し効果を加える事で、より窮地を脱するチャンスに恵まれるようになりました。
選択の自由、素直な操作性、そして適切かつ奥深いゲームバランス。いずれも、グラIIが横シュー最高傑作たる所以なのです。
↓オプションハンターの初登場は1周目4面。
グラIIで成し得た進化は、前項で述べた穴埋めのみならず、ステージ構成からも感じ取る事が出来ます。
初代グラディウスの時点で、火山やモアイ、細胞、そして上下無限スクロール等といった、グラディウスの象徴的な要素がありました。
沙羅曼蛇で、炎や高速スクロール、多彩なボス、そして安全地帯など、グラディウスの枠を広げる斬新な要素を多数盛り込みました。
そして、グラIIは、初代グラディウスと沙羅曼蛇の融合と、更なる独自の進化を両立した、グラディウスシリーズの集大成なのです。
1周までのボリュームが倍増したにも関わらず、全てが見所と言えますが、個人的に特に注目すべき見所は3種類あります。
第1の見所は、1面の人工太陽です。
人工太陽は1面にして、最もグラディウスシリーズの集大成ぶりを象徴するステージです。
具体的には、初代グラディウスの上下無限スクロールと、沙羅曼蛇の3面の炎や龍、そして火の鳥が融合しています。
それも、単なる融合に留まらず、グラII独自の進化を遂げています。
極めて緻密かつ迫力満点の人工太陽、飛沫を上げつつ一挙に来襲する龍、そして格好良い巨大ボスへと急成長を遂げた火の鳥。
このように、人工太陽はグラディウスシリーズの集大成たるグラIIを最も象徴するステージの一つなのです。
↓カッコ良いからだ!という理由で1面になった人工太陽。
第2の見所は、6面の高速スクロールです。
これは、他のステージの2倍近くものスクロールスピードで、迷路のように広大な地形を潜り抜けていくステージです。
つまり、初代グラディウスの上下スクロールと、沙羅曼蛇のラストの脱出シーンのハイブリッドです。
さらに、前述のように地形が広大化した結果、行き止まりを含め、いくつものルート分岐が存在する独自の進化を遂げています。
当然、正解は一つでないため、高速スクロールはグラIIが持つ自由度の高さを象徴するステージなのです。
↓壊せる粒々は、さながら初代グラディウスの2面。
最後に、ボスラッシュです。
これは、冒頭の「ザブ」の来襲を経た後、文字通りボスとの連戦を繰り広げるステージです。
ただのボスラッシュであれば、他社作品に前例がありますが、悪く言えば前までのステージに出たボスの寄せ集めでした。
そこで、グラIIのボスラッシュでは、このためだけに歴代のグラディウスシリーズのボスから厳選された精鋭部隊で構成されたのです。
もちろん、一部のボスは新たに第2の形態を持ち、ラストにグラIIオリジナルの大将を構える等、独自の進化を遂げています。
他社作品にありがちなマンネリ感の軽減、グラディウスの格調高さの強調、そして劣勢の敵側の精鋭部隊による総攻撃という構図。
グラIIのボスラッシュは、これら全てを兼ね備えた集大成なのです。
↓ライフフォースのボスも新技と新形態を披露。
以上より、グラIIのステージ構成が、いかにグラディウスシリーズの集大成であるかが伺えます。
過去のシリーズの良いとこ取りをし、独自の進化を遂げたステージ構成は、まさに集大成と呼ぶに相応しいクオリティなのです。
↓アッと驚く安全地帯も健在。
これまでに述べてきたように、内容的にも演出的にも、グラIIはグラディウスシリーズの集大成に相応しい仕上がりです。
それまでのグラディウスシリーズの短所を直し、長所を伸ばしつつ独自の進化を遂げた、最も理想的な続編と言えます。
事実、グラIIをグラディウスシリーズはおろか、シューティング史上最高の傑作と称える声は、今なお留まる所を知りません。
しかし、見方を変えれば、グラIIはシューティングのマニア化を更に推し進めてしまった功罪あるタイトルでもあるのです。
中でも、個人的に看過できない功罪は3種類あります。
第1の功罪は、ハードルの向上です。
その理由は、パワーメーターセレクト、オプションハンター、そして6面の3点です。
確かに、これらにより自由度や奥深さが格段に向上しましたが、要求される知識やスキルの量も向上してしまった点も事実です。
知識がなければ適当に武装を選んでハズレを引かされたり、4つのオプション全てを奪われたりする制裁が待ち受けています。
また、1速以下のスピードでは、6面は絶対にクリア出来ないため、2〜3速に対応できるだけのスキルが必要なのです。
まして、グラディウスシリーズといえば、フルパワーの規格外な火力もまた大きな魅力の一つです。
にも関わらず、オプションハンターによって、そのフルパワーの自粛を強要、という矛盾を引き起こしてしまったのです。
それまでのグラディウスシリーズは武装が1種類で、1速でも1周クリア出来て、フルパワーこそ正義、という分かり易い作風でした。
得手不得手はさておき、良くも悪くもグラIIは、そうした分かり易さからは程遠い作風へと変わってしまった、と言わざるを得ません。
以後、グラIIのようなハードルの高い作風が長く定着し、マニアと引き換えに一般層を篩(ふるい)に掛けていく事となるのです。
↓最初のカーソルが不利な武装なのもハードルの高さを物語る。
第2の功罪は、連射がモノを言う作風への逆行です。
前々項で述べた通り、連射いらずのレーザーは弱体化されて不利となり、逆に連射が要るリップルは強化されて有利となりました。
それはつまり、悪い意味で初代グラディウス以前の、連射がモノを言う作風への逆行を意味しているのです。
それまでのグラディウスシリーズは、ほぼ全ての場面でレーザーが有利であったため、連射が苦手でも楽しめる作風でした。
しかし、グラIIではレーザーが弱く不利であるめ、連射が苦手な方にとって辛いゲームとなってしまったのです。
そこで、そんな方のために一部のゲーセンでは「連射装置」といって、ボタン押しっ放しで連射が可能となる機械を導入されました。
ただし、それは手動での連射を前提としたゲームバランスの崩壊や、連射装置によるゲーセン格差、といった問題を生んだのです。
その結果、連射装置を導入できないゲーセンのシューティングには客が集まらなくなり、徐々にシェアを落としていく事となるのです。
グラディウスが連射いらずだった頃はシューティングが大人気でしたが、グラIIの頃には、その人気に陰りが見えていたそうです。
以上より、極論かも知れませんが、シューティング人気は初代グラディウスで始まり、グラIIで終わった、と言えましょう。
↓硬い敵のオンパレードである3面も、連射命に輪をかける。
最後に、プレイ時間の倍増です。
確かに、グラIIのステージは非常にクオリティが高く、見所満載です。
それに加え、ステージ数の増加と共にプレイ時間が倍増した結果、1周クリアに30分近く掛かる大ボリュームとなったのです。
これについては、単純に長く遊べる、とプラスに考えるのが普通でしょう。
その一方で、それまでのグラディウスシリーズが持っていた手軽さは薄れてしまった、とマイナスに考える事も出来ます。
また、プレイ時間の倍増は手軽さ重視のプレイヤーのみならず、経営者側にとっても死活問題です。
何故なら、仮に1周クリア程度で終わる腕前のプレイヤーが集まるとすると、単純計算で収入が半減してしまうためです。
それに加え、稼働初期には永久パターンが可能であったため、なおさら経営者は頭を悩ませた事でしょう。
そこで、収入を維持すべく、前述の通り、それまでのグラディウスシリーズよりハードルを上げる事となったはずです。
さらに、永久パターンを潰すべく、最終的には2度目以降の残機増加に必要なスコアを倍増させました。
その結果、短時間で終わる一般層はリピーターにならず、逆にリピーターのマニアは長時間プレイする事態を加速させたのです。
以後、シューティングは人付きや回転率が悪い、との悪印象が定着してしまい、ゲーセンから疎まれる事となるのです。
↓2面でルート分岐がある等、リピーター確保に余念はないが…。
以上より、グラIIは極めて高いクオリティの代償として、シューティングの更なるマニア化を推し進めてしまったのです。
当時、グラIIの熱狂的な流行の裏で、それに付いていけず脱落した層も少なからず存在していたはずです。
にも関わらず、脱落した層が顧みられる事なく、シューティングファンはグラIIに、うつつを抜かしていったのです。
グラIIのように、もっと奥深いゲームを。もっとやり応えのあるゲームを。もっとボリュームのあるゲームを。
コナミもファンも、そのような重厚長大路線に潜む落とし穴に気付かぬまま、突き進んでいきました。
その慢心から作られた、グラIIでウケた重厚長大路線の成れの果てこそ、翌年の「グラディウスIII 伝説から神話へ」なのです。
グラIIに熱狂し、ある意味ではグラIIIが生まれた原因とも考えられるファンでさえも、グラIIIには付いていけませんでした。
そして、一転してグラIIIはシューティング界の汚点、などと彼らからも罵声を浴びせられる存在となってしまったのです。
以後、各社から、いくつものヒット作を出され続けるにも関わらず、シューティングは商売的に2軍以下、と見なされる事となるのです。
もしグラIIの時点で、重厚長大路線の落とし穴に気付く事が出来ていたら。もし、もっと脱落した層の声なき声に耳を傾けていたら。
グラディウス、ひいてはシューティングの神話は、今の伝説と同じ結末には、ならなかったのかも知れません。
↓ゴーファーの嘲笑は、何を語る?
このように、良くも悪くもグラIIは、シューティングの重厚長大化やマニア化を招いたタイトルである、と考えられます。
それでも、グラIIには最高傑作と謳われるに足る3種類の理由があるのです。
第1の理由は、段階的な達成感です。
よくグラIIはゲームバランスが絶妙、と語られます。その背景には、段階を経て味わえる達成感が大きいのではないでしょうか。
前項では、グラIIはパワーメーターセレクトとオプションハンターと6面のせいでハードルが高い、と書きました。
ただ、裏を返せば、ハードルの高さは達成感を味わえる機会の多さを意味しているのです。
序盤はオプションハンターが出て来ないため、それまで通りフルパワーになる達成感と、その爽快感を存分に堪能できます。
それを堪能した後は、オプションハンター対策を覚える事で、無用なリスクを減らして楽に進む達成感を味わえます。
そして、6面から2〜3速に上げた先に、速い自機と広がったオプションを駆使する新しい世界、つまり達成感が待っています。
さらに、最も有利とされる4番装備、かつオプションハンター対策を駆使してクリアした後でも、まだまだ終わりではありません。
パワーメーターセレクトで別の武装や、あえてフルパワーを維持してのクリアを目指す事で、更なる達成感が見込めるのです。
このように、順を追って骨の髄までしゃぶり尽くせるだけの旨味ある達成感こそ、グラIIの絶妙なゲームバランスなのです。
↓3面が辛いなら、いったん威力重視の2番装備で慣れる手も。
第2の理由は、バランスの取れた自機の性能です。
グラIIの自機には、初代グラディウスや沙羅曼蛇の時ほどの飛び抜けた火力はありません。
その代わりに、オプションの挙動や後ろからの弱さ、そして低い防御力、といった欠点が大きく改善されています。
また、オプションハンターのためにフルパワーにし辛い、という事は、逆に言えばフルパワーでなくても良い、という事でもあります。
これは、必要なパワーを抑えた分、敵弾を見易い、死んでから立て直すまでが短く済む、といった利点にも繋がっています。
自機の性能、破壊の爽快感、そして視認性のバランスに秀でた作風が、グラIIならではの快適さを生み出しているのです。
↓火力が落ちても、爽快感は決して見劣りしない。
最後に、難易度やボリューム、そして演出のバランスの良さです。
少なくとも、グラVや他のアーケード向けのグラディウスシリーズを見ると、意外と偏ったバランスになりがちです。
例えば、初代グラディウスや沙羅曼蛇などは難易度やボリュームが抑え目で手軽に楽しめますが、演出が弱めです。
逆に、曼蛇2を除くグラIII以降となると、演出に秀でる反面、難易度やボリュームの上昇が極端で、人を選ぶ傾向にあります。
それを考えると、如何にグラIIのバランスが極めて良好であるかが、お分かり頂けたでしょうか。
↓適度なボリュームに凝縮された演出。
以上より、グラIIならではの面白さ、最高傑作たる理由とは、達成感や様々な要素のバランスに秀でた作風です。
グラディウスシリーズ特有の尖りっぷりこそ薄れたものの、何事も程良く整ったバランスにより、プレイ感覚は実に快適です。
この安定的な作りからも、如何にグラIIが、それまでのグラディウスシリーズの集大成であるかが伺える事でしょう。
↓連射が駄目なら、連射装置を使えば良いじゃない。
このように、良くも悪くもグラIIはシューティングの進む方向を決定づけた重要なタイトルの一つです。
にも関わらず、ここ20年ほどは、据え置き機でのアーケード版準拠の移植には恵まれていませんでした。
グラIIの据え置き機での移植で代表的なものは、ファミコン版、PCE版、そしてPS版とセガサターン(SS)版あたりでしょうか。
これらは4年おきに発売されており、基本的にハードが新しくなるほどアーケード版に近く仕上がる傾向にあります。
このうち2010年より、PCE版がPS3のゲームアーカイブスとして823円で配信中です。
PCE版には、アーケード版にない主な追加要素が2種類あります。
完全新作のオープニングと、中盤に挿入された神殿ステージが、そうです。神殿は不要、という方のための隠しモードもあります。
また、音楽がアーケード版より高音質で、ほぼアーケード版通りの攻略が通用する等、当時としては異例のクオリティです。
その一方で、アーケード版と比べると多少落ちるグラフィックや効果音、制約のあるボタンコンフィグ等、問題点もあります。
にも関わらず、入手困難なPS版を購入済みの場合を除き、PS3を含む現行の据え置き機ではPCE版までしか遊べませんでした。
そのため、現行の据え置き機で遊べる、アーケード版の完全移植を改めて渇望される事となったのです。
↓PCE版の神殿の音楽は、村井聖夜のデビュー曲でもある。
そして2016年、PS4のアーケードアーカイブスにて初代グラディウスや沙羅曼蛇に続き、遂にグラIIの配信がスタートしたのです。
PS4版はPCE版と同額ですが、アケアカなので当然ながら、それまでの全ての移植版をも上回るとされる出来です。
御馴染みの中断セーブにオンライン上のランキング、そしてスキャンライン機能も完備です。
スターフォース以降のアケアカ作品に実装されている、ハイスコアモードとキャラバンモードは、もちろんグラIIにもあります。
これらは、一部を除き初期設定かつ連射ボタン使用不可でスコアを競うモードで、うちキャラバンは5分間の時間制限つきです。
キャラバンでは、通常の難易度だけでなく7周目から始める超高難易度モードもあり、よりスコア稼ぎを加熱させます。
恒例のバージョン違いも健在です。北米版や幻の初期バージョンも含めた、5つのバージョン全てを同時収録しているのです。
そして、ある意味PS4版一番の売りと言えるのが、サウンド鑑賞モードです。
これは、メインタイトル画面でコナミコマンドを入力すると突入し、ゲームと同じ流れで全ての音楽を聴く事が出来るモードです。
所謂サウンドテストとは異なり、好きな曲に切り替える事は出来ない他、5面が1ループで転調してしまう不備もあります。
それでも、 アケアカではサウンドテストの導入を見送られてきただけに、ファンにとっては願ってもないサプライズであった事でしょう。
↓2面以降の空中戦とボス戦が何度も流れるのは御愛嬌。
なお、当初は最終面の動く床のグラフィックが違う、ゲームに搭載された連射装置が遅い、という細かな問題点がありました。
それを鬼の首を取ったように非難する「警察」と、その警察を非難する「正義の使者」との対立が、ネットを騒がせました。
まるで初代グラディウスの遅延騒動を思わせますが、それとの決定的な違いが一つありました。
それは、彼らならすぐ直してくれる、と信頼して静観する「第三者」もいた点です。
第三者の存在は初代グラディウス以来、遅延の解消を含めたアケアカスタッフの真摯なアフターサポートの賜物と言えましょう。
事実、第三者の期待通り、上記の細かな問題点は1か月以内に修正され、下らない罵声の浴びせ合いを黙らせる事となるのです。
↓グラIIを何周もする猛者ですら気付かない違いだった。
このように、改めてグラIIの人気とアケアカスタッフの真摯さを実感させたPS4版ですが、まだまだ納得いかない点があります。
それは、ボタンコンフィグとステージセレクトの2点です。
一応、ボタンコンフィグの改善点はあります。パワーアップの項目が2つに増えた点が、そうです。
ただ、何故かミサイルの項目だけが1種類であるため、未だにゲーセン配置の完全再現には至らないのです。
確かに、「ショット+ミサイル」でも大した支障はありません。それでも、ゲーセン配置に出来るに越した事はないと思います。
ステージセレクトが未搭載なのはアケアカの伝統ですが、同時期のナムコ「アーケードゲームシリーズ」には搭載済みです。
まして、グラIIはそれまで以上に復活パターンの構築に骨が折れるゲームなので、ステージセレクトを搭載して欲しいものです。
他にも、中断機能が稚拙、原則としてゲーム中のコナミコマンドが使用不可、といった点など、PCE版より不便な点もあります。
また、 PCE版とて、アーケード版と全く同じでないとはいえ、演出さえ考えなければアーケード版と遜色ないクオリティです。
そのため、既にPCE版を持っている方がPS4版を買っても、変わり映えしない点に拍子抜けするかも知れません。
それでもPS4版は、あくまでアーケード版と全く同じグラIIを手軽にプレイしたい、というニーズに応える一つの決定版なのです。
↓スキャンラインで引き締まる映像美は、PS4版だけの魅力。
グラIIは、3つの点において、それまでのグラディウスシリーズの集大成を名乗るに相応しいタイトルです。
第1に、絶妙なゲームバランスです。
オプションハンターやパワーメーターセレクトの導入、そして欠点を改めた自機の性能は、段階的な達成感と自由度を両立しました。
第2に、洗練されたステージ構成です。
それまでのグラディウスシリーズの良いとこ取りをし、独自の進化を遂げたステージ構成は、ファンを熱狂の渦に巻き込みました。
最後に、過不足なく纏められたバランスです。
他のグラディウスシリーズで歪になりがちな難易度やボリューム、そして演出のバランスが、極めて良好である稀有な例となりました。
一方で、それまでのグラディウスシリーズと比べて重厚長大ぎみで、シューティングのマニア化を推し進めた功罪もあります。
要求される知識やスキルが増えた事でハードルも上がり、ますます一般層には手を出し辛いゲームと化した嫌いは否めません。
それでも、そのハードルさえ乗り越えられれば、安定感ある作りで快適に楽しめるだけのクオリティは、まさに最高傑作です。
PS4版はPCE版と同額ながら、アーケード版と全く同じグラIIを手軽に楽しめる、一つの決定版です。
以上より、グラIIは古風なシューティングをしたい、色々な遊び方が出来る奥深いゲームをしたい、という方にオススメです。
↓事実上の最終ボス「クラブ」にも、2〜3通りもの正解あり。
アーケード版の 初代グラディウスや沙羅曼蛇、そしてグラIIを現行の据え置き機で揃える事は、10年ほど叶わぬ夢でした。
先んじてグラIIのPCE版を買ったのも、まるで進展が見られない夢に痺れを切らしたためです。
事前にPCE版の出来が良い事は知っていたし、一通りプレイして十分満足もしたので、買った事は後悔していません。
それでも「アーケード版」への憧れが消える事なく、やきもきしていた所、初代グラディウスのアケアカ化を聞き付けたのです。
そこで、初代グラディウスだけに終わらず、沙羅曼蛇やグラIIも出ますように、と祈ってPS4ごと購入しました。
予想より大分遅れた沙羅曼蛇から、半年足らずでグラIIの配信が決まった時、僕は興奮を抑えきれませんでした。
僕が中学生の頃から約10年も思い描いていた夢が、遂に叶ったのですから。
余談ですが、PCE版というと、初めて観たオープニングの動画が、「ロゴ→PCE版→アーケード版」の順番に編集されていました。
それがとても格好よく思ったのですが、実際は「ロゴ→アーケード版→PCE版→ランキング→最初」だったため、少しガッカリでした。
特に、初回はオープニングが流れず、いきなりタイトル画面だったため、なおさらでした。ロゴは懐かしくて良かったですが。
↓内容、曲ともにピカイチの、PCE版オリジナルOP。
閑話休題。アーケード版通りの緻密なドット絵に、迫力ある効果音を堪能できただけでも、PS4版を買って良かったと思いました。
既にPCE版で1周していましたが、ブランクもあって、気持ちを新たに臨む事が出来、PS4版でも1周クリアを果たしました。
それだけでなく、苦手だった4面の天井ハッチ地帯も、単に地形に隠れつつハッチからの雑魚を倒す事で克服しました。
また、PCE版より7面の復活や2周目冒頭が簡単である事もあり、2周目4面、約60万点を記録するまでに成長しました。
ともあれ、思春期という多感な時期に叶わなかった夢が、社会人になった今ようやく叶った事は、とても感慨深いです。
なにせ、これから新たな夢に向かって、希望を持って突き進む事が出来るのですから。
↓4番装備なら、前に出て2WAYミサイルで倒す手も。
ところで、前々項で「警察」だの「正義の使者」と書きました。警察を許せない正義の使者も多いでしょうね。
ただ、僕自身は、むしろ警察も必要である、と考えています。
確かに、どちらであろうと誹謗中傷の類は論外ですし、正義の使者の「粗探ししてないで楽しめ!」との意見も理解できます。
ただ、少なくともアケアカに関しては、警察が粗探しをしてくれるからこそ、より高い品質を追求できる、と考えられます。
グラIIの最終面の動く床に関しても、警察のように騒ぐとまではいかずとも、気になって仕方がない方も、いたはずです。
仮に正義の使者の言論弾圧によって、動く床が未修正のまま放置されるとしたら、いったい誰が彼らのフォローをするのでしょうか?
それと、初代グラディウスの時に、正義の使者の「遅延はデマ」というデマを真に受けられて放置されていたとしたら。
そう、それこそゲーセン族の悪夢が再来していたはずです。
しかし幸いにも今のところ、そのような最悪の事態は訪れていません。
それは、警察が正義の使者からの言論弾圧に負けず、アケアカスタッフが正義の使者からの悪魔の囁きに屈しなかったからです。
よって、アケアカが高品質を追求する限り、例え正義の使者から反感を買う事となろうと、警察もアケアカに必要なのです。
もちろん、警察の行き過ぎた粗探しばかりでは、アケアカスタッフも凹むでしょう。そこで正義の使者が褒めてあげれば良いのでは?
アンパンマンと「ばいきんまん」も、互いが互いを必要としているのです。何事も大事なのは、飴と鞭のバランスですよ。
↓へろす。PCE版では修正済み。
初代グラディウスです。グラIIのレーザーの弱さに納得いかない方は、こちらで存分にレーザーの強さに酔いしれましょう。
・沙羅曼蛇2
沙羅曼蛇名義の続編です。手軽さと演出をバランスよく兼ね備えた、稀有なグラディウスの一つです。
・ダライアスバースト アナザークロニクル
21世紀に蘇ったダライアスです。難易度、ボリューム、演出いずれも高レベルで、近代横シュー最高傑作の一角です。
検索等で来て頂いたついでに、ご意見ご感想などを残して頂けると嬉しいですが、事前に三か条を一読ください。
ゲームアーカイブスとはいえ、旧サイト末期にグラIIのレビューを行っていたため、当初はもっと後回しとする予定でした。
ただ、旧版では沙羅曼蛇やライフフォースの事に触れられなかった点を初め、いま読み返すと色々と気になる点がありました。
他に目ぼしいタイトルもなかった事もあり、アケアカで出て2か月のグラIIでVGF2周年を飾る事と決めたのです。
とはいえ、旧版の存在が色々な意味で制作の足枷となったため、実際に制作に取り掛かったのは6月に入ってからです。
そんな状況であったため、最悪、旧版のままでも、末日まで延びても、と考えており、正直モチベーションが上がりませんでした。
また、初めは家庭用も含む全てのグラディウスシリーズに触れようとした点も、スケールがデカすぎて、やる気が出ない理由でした。
結局は、アーケード版のみに焦点を絞る方向に落ち着いたことで、ようやく作り出すと止まらない程モチベーションが上がりました。
最終的には旧版をベースにしつつも、旧版からの差別化と、中旬に公開できるに足るクオリティを両立できたと思います。
といっても、画像の準備やら他ページのリンク貼りやらで、予定より1日遅れてしまいましたが。
そうでなくても、0時公開では寝不足の原因となるので、次からは朝9時の公開とさせて頂きます。
グラIIで「4/10 伝説から神話への兆候」等を書くと、色々と言われるでしょうね。そうでなくても突っ込みどころ満載かも知れませんね。
それでも敢えて書いた理由は、グラIIは全く欠点のない最高のゲーム、等と称えられる一方の風潮に疑問を抱いたためです。
当時ついて行けなかった人もいるのではないか、グラIIIの兆候は前からあったのではないか、と考えつつ読んで頂ければ幸いです。
もう一つ言われそうなのは、思い出話の最後ですかね。どうか、自分に意見する奴は警察、等と偏った考え方を持たぬよう。
2016/06/17 初公開