魔法大作戦
本レビューで対象とする精通度:★★★☆☆
(シューティングゲームを除くアーケード・家庭用ゲームに精通)
所要時間:約5分(最低限) or 約32分(たっぷり) or 約37分(全て)
注釈の注釈
「専門用語(注1A)」(本文)
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注釈を読んでから、もう一度
「専門用語(注1A)」:注釈
↑を押すと、本文に戻れます。では下の本文を、どうぞ。
ぷよぷよ以前、つまり80〜90年代前半のコンパイルは、主に家庭用ゲーム機の「縦シュー(注1A)」に定評のあるメーカーでした。
とりわけ超スピードで駆ける感覚など、「アーケード(注1B)」の縦シューをも凌ぐ演出が話題を呼んだのです。
それでもアーケードとタメを張るには性能的に厳しく、逆にアーケードの縦シューにはコンパイル的な演出が足りませんでした。
そこで1993年、元コンパイルのスタッフが独立して「ライジング(注1C)」を設立し、アーケードの縦シューへと活躍の場を移しました。
それはつまり、アーケードが持つ高性能とコンパイル的な演出のハイブリッドという、画期的な縦シューの登場を意味します。
そのゲームこそ、ライジングが開発し、「エイブルコーポレーション(注1D)」が発売した縦シュー「魔法大作戦(注1E)」なのです。
家庭では長らく高価で古いPCでしか遊べませんでしたが、実に22年ごしに新たな魅力と共にPS4にて復刻されたのです。
↓鉄と魔法の一大スペクタクル24年の時を越え再演!
(注1A)縦シュー:「縦スクロールシューティング」の略称。敵味方が縦に正対し、進みつつ敵を撃ち敵弾を避けるゲームジャンル。
(注1B)アーケード:ゲーセンで遊べる「アーケードゲーム」。当時は性能的に家庭用ゲーム機の一歩も二歩も先を行っていた。
(注1C)ライジング:かつて存在し、魔法大作戦を作ったゲーム会社。後にゴルゴ13のゲームを手掛けた実績あり。
(注1D)エイブルコーポレーション:かつて存在し、魔法大作戦を発売したアミューズメント会社。ライジングのゲームも数多く担当。
(注1E)魔法大作戦:本レビューで解説。ファンタジーとスチームパンクを組み合わせたRPG的な世界観が特徴。
目次
最低限の文章で済ませたい方には「★」の項目のみ、たっぷり読みたい方には「☆」の項目も追加で読んで頂ければ幸いです。
それらを読んでもなお飽き足らないのであれば、ぜひ末尾が空欄の項目も読んで下さい。
目次より先に読んで頂いた項目です。
縦スクロールシューティングの大まかな概念、及び、魔法大作戦のアイテムの軌道を解説します。
縦スクロールシューティングとしては珍しい、魔法大作戦のファンタジーRPG的な世界観を紐解きます。
縦スクロールシューティングが持つ面白さ、及び、魔法大作戦ならではの作風を考察します。
PS4で発売された、魔法大作戦の特徴を解説します。
続いて新設されたモードの魅力を考察します。
これまでの解説から、本作がどんなゲームで、どんな良さがあって、どんな方に向いているかを解説します。
文字通り、本作に関する、個人的な思い出話です。
本ページと何かしらの関連性や共通点を持つコンテンツを3つ紹介します。あと掲示板もどうぞ。
本ページについての、あとがきです。
「縦シュー(注2Aa)」好き以外に、縦シューを一言で伝えるならば、「「スペースインベーダー(注2Ba)」みたいなの」が無難でしょう。
有り体に言えば、そのインベーダーを更に凄くしたのが縦シューです。具体的には、最低でも下記3つの改良が加えられています。
(1)縦に長いステージを勝手に前進(=縦スクロール)これらをベースに、各社が競うようにゲームごとに異なる趣向を凝らし、多種多様な縦シューが作られていったのです。
やがて主流となったのが、8方向に動いてアイテムでパワーアップし派手に撃ちまくり、「ボム(注2Ca)」を運用するタイプです。
続いて、キャラセレや画面を覆う弾幕もまた定着し、縦シューは一応の完成を見る事となります。
皮肉にも、それがマニア向けの印象を定着させた一因ですが、敵を撃ち敵弾を避ける、そんな単純明快な本質は不変なのです。
↓慣れないうちは、片っ端からアイテムを取ろう。
そんな「縦シュー(注2Ab)」の一つである「魔法大作戦(注2Da)」は、概ね主流どおりですが、アイテムの落ちる軌道に注目です。
主流のタイプでは、出てきたアイテムは画面中を、時に中央でフワフワと、時に縦横無尽に忙しなく漂いがちでした。
そのため画面下で待っても、なかなかアイテムを取れず、無理して取りに行って殺される事は一種の、お約束と化していました。
また、一定時間ごとにアイテムの種類が変わる事も珍しく無く、逆に望まぬアイテムを取らされて、やはり殺されがちでした。
このように、アイテム一つ取るにも避けるにも一苦労で、人気の裏で初心者を篩に掛けてきた事は想像に難くありません。
そこで、魔法大作戦ではコンパイル時代と同じく、いったんアイテムを上げて落とす軌道とする事で、一応の改善を図ったのです。
無理せず画面下で待っても直ぐに取れるし、不要なら避ければ二度と戻って来ないので比較的、取らされ難くなっています。
かくして魔法大作戦は、他の縦シューで篩に掛けられた初心者の受け皿となり、処女作として一定の支持を得る事となるのです。
↓これが超魔法ボンバー。ヤバくなる前に使え!
(注2Aa)縦シュー:「縦スクロールシューティング」の略称。敵味方が縦に正対し、進みつつ敵を撃ち敵弾を避けるゲームジャンル。
(注2Ab)縦シュー:上記2Aaを参照。ボムを抱えたまま死ぬと全て没収される。これを俗に「抱え落ち」と呼ぶ。
(注2Ba)スペースインベーダー:1978年稼働。縦シューでは無いが概要だけ書くと、ほぼ上記2Aaの通りとなる国民的ゲーム。
(注2Ca)ボム:本作での正式名称は「超魔法ボンバー」。数に限りがあるが、敵に大ダメージを与え、かつ敵弾を消去する。
(注2Da)魔法大作戦:本レビューで解説。ファンタジーとスチームパンクを組み合わせたRPG的な世界観が特徴。
今は、さほどでもありませんが、かつて「シューティング(注3Aa)」は人工物が中心であるSFやミリタリーの世界観が主流でした。
何故なら敵味方が撃ち合う内容と、黎明期のハードでは人間キャラを満足に表現できない事情が合致した為です。
それは「スペースウォー!(注3Ba)」や「スペースインベーダー(注3Ca)」がSFで、主人公は宇宙船や砲台である点からも伺えます。
その名残から、人間キャラを表現できる様になっても、多くのシューティングはSFやミリタリーの路線を貫きました。
クールで男臭い戦場、男心くすぐるメカ、そして爆発演出で彩られるバイオレンスな雰囲気は、未だ根強い支持を受けています。
しかし80年代半ば辺りから、マリオやドラクエ等、魅力的な人間キャラやモンスターが活躍する世界観のゲームが台頭しました。
それと反比例してシューティングは苦境となり、昔ながらの雰囲気を残すか、多様な世界観に挑むかのジレンマに悩まされました。
↓多分いま作ったら、みんな生身で飛んで戦うはず。
そこで、「魔法大作戦(注3Da)」が取った選択は、ファンタジーとスチームパンクの組み合わせと言う、両者の良いとこ取りでした。
それはつまり、昔ながらの「シューティング(注3Ab)」の雰囲気を残しつつ、多様な世界観に挑む事を意味します。
これにより人工物のみならずゴブリン兵士や魔法使い、そしてドラゴンなど、馴染みのモンスターもまた敵として登場するのです。
もちろん、甲羅が人工物である亀やドクロを模った戦艦など、ハイブリッドの賜物である敵キャラも多く現れます。
敵だけでなくプレイヤー側にもハイブリッドの影響が伺えます。キャラの絵や性格をアピールしつつ、概ね戦闘機で戦うのです。
また、中には並外れた体躯を活かし生身で戦う和風のキャラも居る等、人外も活躍するファンタジーらしさも忘れていません。
キャラのアピールは冒頭とステージクリア後に限られるので、キャラが好きな方も、そうでない方も納得のバランスでしょう。
こうした下地があるからこそ、何度でも挑んでくる敵が、魅力的なライバルキャラとして受け入れられ深い印象を残したのです。
↓これぞ「驚異のボケツッコミシステム」!
こうした画期的な世界観を余す所なく、ステージや敵キャラの洗練された芸の細かい演出も見逃せません。
まず、超スピードで大空を駆ける疾走感は、当時のアーケードゲームの「縦シュー(注3Ea)」としては実に画期的でした。
続いて、ただの雑魚に過ぎないゴブリン兵士からして、逃げ惑う一般人を襲ったり戦艦や工場で、せっせと働いたりと大忙しです。
雑魚ですらそうなので、ボスとなると実に滑らか、かつダイナミックな動きで魅せつつ翻弄して来るのです。
何より注目すべきは立体感です。ゲーム自体は平面ですが、地面と空中の高低差を表現した演出が目を引きます。
具体的には、3面の門や岩を壊すと、上の兵士や岩が深い地面へと真っ逆さまである他、壁も立体的なのです。
終盤の巨大ロボに至っては、地に足を着けているにも関わらず空を飛ぶ主人公と激突する事から、スケールの程が伺えます。
このように「魔法大作戦(注3Db)」は、目くばせの度に引き込まれる程、世界観や演出に秀でた縦シューなのです。
↓怪物の目にも涙。その理由は…。
(注3Aa)シューティング:敵を撃ち敵弾を避ける「スペースインベーダーみたいな」ゲームジャンルの総称。
(注3Ab)シューティング:上記3Aaを参照。ただし近年は、もっぱらFPSだけ指して呼ばれがち。
(注3Ba)スペースウォー!:1962年に作られた世界初のシューティングゲーム。互いに宇宙船で撃ち合う2人専用の対戦ゲーム。
(注3Ca)スペースインベーダー:1978年稼働。シューティングの中でも特に上記3Aaの概念を本格的に広めた国民的ゲーム。
(注3Da)魔法大作戦:本レビューで解説。ファンタジーとスチームパンクを組み合わせたRPG的な世界観が特徴。
(注3Db)魔法大作戦:上記3Daを参照。絶体絶命となった王国が敵国に賞金を懸け、それに乗った4人の賞金稼ぎが戦う。
(注3Ea)縦シュー:「縦スクロールシューティング」の略称。シューティングの一ジャンルで敵味方が縦に正対し、進む。
人間、特に男性には多かれ少なかれスリルに晒され、それを乗り越える事で快感を得られる習性がある、とされます。
命までは賭けたくないが、手軽に一定のスリルや快感が欲しい。そんな方に適したゲームジャンルこそ「縦シュー(注4Aa)」です。
縦シューは30分ほどで完結する手軽さで、その間ほぼ立ち止まる事が許されず、絶えず敵の攻撃に晒されてスリル満点です。
どんな攻撃であろうと、もし避けられなければ問答無用で残機が減ります。残機が0の時に死ぬとゲームオーバーです。
それに対してプレイヤーが行う事は撃つ、避ける、この2つです。実にシンプルであるが故に、極めて奥が深いのです。
例えば、敵弾を引き付けて大きく移動、隙間を潜るよう微調整、一か八かの接近戦、そして苦しい時の「ボム(注4Ba)」頼み等々。
このような技術や学習で敵をいなしてスリルを乗り越え、片っ端から大爆発させる快感。それが縦シューの魅力なのです。
↓昨今の大作ゲームより内容も操作もシンプル。
そんな「縦シュー(注4Ab)」の中でも「魔法大作戦(注4Ca)」は、際立ってパワー勝負のハチャメチャ感が伺える作風です。
その裏付けは3種類あります。 第1の裏付けは、プレイヤー側の強さです。
魔導書の様なアイテムを取れば前方集中や広範囲への散弾、そして追跡する弾など、強力な武器で攻撃できます。
落ちる軌道的にアイテムを取り易く、1面でフルパワーになれる点もまた、力強さを印象付けています。
また、よほど場所が悪くない限り、死んでも2つまでは失ったアイテムを取り返せるので、パワーを維持し易いのです。
キャラ毎に得意とする武器が決まっていますが、それ以外の武器も上手く使い分ける事で、更なる強さを発揮できます。
中でも特に攻撃の力強さを実感できるのが、「チッタ(注4Da)」の追跡する火炎放射でしょう。
相性の悪い場面もありますが、敵の死角から途切れない炎でゴリゴリと焼き尽くす感覚は魔法大作戦ならでは、なのです。
↓後ろがガラ空きだぜ!?
第2の裏付けは、獲得できる「ボム(注4Bb)」や残機の多さです。
後にも先にも、開始5分でボムを9個もストックでき、最終的には最大17個もストックできる大盤振る舞いは他に類を見ません。
ボムだけでなく残機にも注目です。スコアを30万点とる度に増える他、全クリするまでに確実に120万点は取れます。
最初の残機は2機なので、全クリまでに最低でも4機は増えて、合わせて6機もの残機を持てます。
加えて、最初から3個のボムをストックしている他、死ぬと強制的にボムの残りが3個となります。
よって、ボムを多くストックしたまま死ぬと損なのですが、言い換えればボムを使い切ってから死ねば3個もらえる訳です。
以上を踏まえて全クリまでに使用できるボムの総数を計算すると、(2+4)*3+17=35個となります。
ボム自体も非常に強力なので、まず全てのボムを使い切り、それから上達に合わせてボムの配分を見直すと楽しくなるのです。
↓ボムを10個ストックするとPS4トロフィーが解禁。
最後に、敵の強さです。
これまで述べた通り、プレイヤー側の強さ、及び、「ボム(注4Bc)」や残機の多さ等、こちらに有利な要素が多いです。
では誰もがクリアできるヌルゲーなのか、という疑問が浮かぶでしょうが残念ながら、そうではありません。
何故なら全編通して初見殺しが多く、慣れないうちはボムを使う間もなく殺されがちである為です。
序盤たる2面からして大型機を中心に、見てからでは避けられない攻撃を平気で繰り出して来るのです。
終盤に至っては、熟知してもなおボム無しでの回避が困難な攻撃もあり、ボムが幾つあっても足りません。
よってボムを惜しめば、まともに太刀打ち出来ず、惜しまなければボムある限り楽勝と、悪く言えば大味な嫌いは否めません。
それでも、そんな敵の強さがゲームに程よい緊張感や緩急、そして計画的にボムを使う楽しさをもたらしている点も事実なのです。
↓悪夢の苦無ぐるぐる。
以上より、数ある「縦シュー(注4Ac)」の中でも「魔法大作戦(注4Cb)」は、敵味方の強さやリソースのインフレが著しい一品です。
1面でフルパワーになれる展開の早さ、火炎放射を筆頭に、敵の死角からゴリゴリと焼き尽くせる力強さ。
一見すると過剰供給とも思える大量の「ボム(注4Bd)」や残機で、一方的に敵を蹂躙する人海戦術の豪快さ。
そして、実はボムや残機が適量だったと痛感する程の、理不尽かつ諸行無常な敵の強さ。
こんな作風ゆえに、ボムを使わない事に美学を感じる方とは、全く相容れないゲームと言わざるを得ません。
それでも、そんな理屈には決して負けない程の魅力に溢れている点も事実です。
とにかくボムを使う事を是とした上で、計画的にボムを配分し、後はパワーをパワーで押し切る感情的な気持ち良さ。
このように我武者羅に、ぶつかり合うハチャメチャ感を追求したパワー溢れる縦シュー、それが魔法大作戦なのです。
↓こんな弾幕へっちゃらだ、との慢心に勝てるか!?
(注4Aa)縦シュー:「縦スクロールシューティング」の略称。敵味方が縦に正対し、進みつつ敵を撃ち敵弾を避けるゲームジャンル。
(注4Ab)縦シュー:上記4Aaを参照。黎明期はボムの有る縦シューの方が稀であった。
(注4Ac)縦シュー:上記4Aa,4Abを参照。代わりに、アイテムでバリアを張ったり合体したりと、様々なギミックがあった。
(注4Ba)ボム:本作での正式名称は「超魔法ボンバー」。数に限りがあるが、敵に大ダメージを与え、かつ敵弾を消去する。
(注4Bb)ボム:上記4Baを参照。最初に3個あり、1面で2個、2面で4個もらえるので合計して9個。
(注4Bc)ボム:上記4Ba,4Bbを参照。初心者からマニアまで満足できるゲーム作りを目指した結果、ボムが定着。
(注4Bd)ボム:上記4Ba〜4Bcを参照。ただし初心者ほどボムを使い切れない物で、皮肉にもマニア以外を篩に掛けてしまった。
(注4Ca)魔法大作戦:本レビューで解説。ファンタジーとスチームパンクを組み合わせたRPG的な世界観が特徴。
(注4Cb)魔法大作戦:上記4Caを参照。ボムをストックして得られるボーナスの類は一切ナシ。バンバン使うのだ。
(注4Da)チッタ:魔法大作戦のプレイヤーキャラの一人。退屈な日常に嫌気が差して参戦した、魔法使いの女の子。
これまで述べた通り、「魔法大作戦(注5Aa)」は「シューティング(注5Ba)」の中でも世界観やパワー勝負の表現に秀でた一品です。
1993年当時、格ゲーブームもあってシューティングのトレンドが、重厚長大から軽薄短小へと移りつつある時代でした。
その過程で、シューティングで一世を風靡したメーカーが、軒並み倒産もしくは方向転換を余儀なくされていました。
代わって新たなメーカーが軽薄短小なシューティングで人気を博す等、図らずも世代交代の様相を呈していたのです。
「ライジング(注5Ca)」もまた、その流れに乗る事に成功し、以降のシューティング史に大きな足跡を残す事となるのです。
にも関わらず、その足掛かりとなった魔法大作戦の移植は、1994年にX68000、翌年にFM TOWNSの2つのみでした。
激しい処理落ち云々の前に、そもそも入手や活用が極めて困難であり、現行のゲーム機での再復刻を求められました。
↓真の原曲?PC版のアレンジ音楽も完全復活。
それから22年後、「M2ショットトリガーズ(注5Da)」第3弾として、主に3種類もの追加要素と共に、PS4にて現代に蘇ったのです。
第1の追加要素は、M2ガジェットです。これは24年間、隠されていた内部の情報を画面の余白に曝け出す機能です。
もともと「魔法大作戦(注5Ab)」には、ボムのストック表示が9個で止まる点を始め、一部の情報を把握できず困る事がありました。
特に、現時点での武器のパワーや敵の残り体力などが明示されない点は、更なる高みを目指す上で不便でした。
何故なら、ラスボスの一角を考えなしに攻撃、もしくは2周目で「メインショット(注5Ea)」を最強にすると手が付けられなくなる為です。
それとは別に、ゲーム中は撃って避けてで忙しく、せっかくの芸コマな世界観や演出に目を向ける余裕がありませんでした。
そこで、PS4版ではM2ガジェットの搭載により、困り事を解決し、かつ世界観などに目を向ける切っ掛けが出来たのです。
右側のマップは単に世界観の表現に留まらず、危険なギミックに目印が付けられており、プレイヤーを導いてくれるのです。
↓縦画面の時も主要な機能は揃っている。
第2の追加要素は、カードイラストを始めとする、やり込み要素です。
「魔法大作戦(注5Ac)」には世界観から雑魚キャラ、モブに至るまで、膨大な数の裏設定があります。
それまで家庭用ゲーム機を主戦場としていた名残ですが、回転率の都合によりゲーム内での披露は叶いませんでした。
それとは別に「シューティング(注5Bb)」は、やり込み要素、及び、初心者に向けた教示の乏しさを指摘されがちです。
これらもまた、昔ながらのアーケードゲームの宿命ですが、なかなか家庭用ゲーム機に移植されても対策されませんでした。
そこで、PS4版では裏設定を網羅したカードイラスト等により、これらの課題の解決を試みたのです。
ゲームクリアで全て解禁でき、PS4トロフィーと共に攻略のヒントが記されている事もあるので、一度は目を通す価値があります。
また、各モードやキャラの進行度も表示されるので、進行度をコンプリートすべく繰り返し遊ぶ目標が出来たのです。
↓少しホロリと来る設定も。どうせ仲良く御招待だがな!!
最後に、アーケード版より易しい新モードの追加です。
これまで解説した通り、「魔法大作戦(注5Ad)」は「ボム(注5Fa)」や残機の多さを筆頭に、プレイヤー側が強いです。
よって、上手く配分すれば初心者でも戦える余地がある…と言いたい所ですが、言うは易く行うは難し、です。
ボムありきの割にはボスの強さが運に左右される傾向にあり、理想的な配分をするには余りに理不尽でした。
やられると手持ちのボムを全て失うペナルティもまた理不尽さに輪をかけており、著しくゲンナリさせられがちだったのです。
そこで、新モードの追加により、格段に初心者でも戦える余地が生まれたのです。
特に「オートボム(注5Ga)」が大きいです。これによりボムを配分する戦略性を損なう事なく、ゲンナリ感の軽減に成功しています。
設定を変えればオートボム等を残したまま、アーケード版より難しくする事も出来ます。骨の髄まで、しゃぶりましょう。
↓もちろん、限界まで易しくする事も可能。
以上より、PS4版の「魔法大作戦(注5Ae)」は、初めての「シューティング(注5Bc)」として勧めるに足る抜群のサービスぶりです。
元々アーケード版からして世界観やキャラが魅力的で、容易く力強さを堪能できる間口の広いゲームでした。
PS4版は、アーケード版の忠実な復刻に留まらず、更に良さを高めた決定版なのです。
他にも、PXZ2などに関わった実績のある作曲家「溝口哲也」による完全新規のアレンジ音楽も加わり、より深みが増しています。
お値段こそ3996円と、元が24年前のシューティング一本にしては高額ですが、それなりの価値は保証されています。
余談ですが、2018年現在の「M2ショットトリガーズ(注5Db)」の他のラインナップは、どれも高品質ながら多少、癖が強めです。
それを考えると相対的に癖が少ない魔法大作戦こそ、初めてM2ショットトリガーズに触れる方にもオススメなのです。
そして、これで終わりではありません。もう一つ、「魔法大作戦Rev.2017」とでも言うべき目玉が用意されているのです。
↓公式サイトに無い投稿イラストも全て閲覧できる。
(注5Aa)魔法大作戦:本レビューで解説。ファンタジーとスチームパンクを組み合わせたRPG的な世界観が特徴。
(注5Ab)魔法大作戦:上記5Aaを参照。基本的にアーケード版で全クリすると2周目となり、とても難しくなった1面から再スタート。
(注5Ac)魔法大作戦:上記5Aa,5Abを参照。ちなみに画面左上のキャラのアニメーションは全て新たに描き起こされた。
(注5Ad)魔法大作戦:上記5Aa〜5Acを参照。ボムは投下から発動までに僅かな時間差があるので、引き付け過ぎは禁物。
(注5Ae)魔法大作戦:上記5Aa〜5Adを参照。続編や関連作品はあるが、いずれも本作より癖が強めで遊ぶ機会も乏しい。
(注5Ba)シューティング:敵を撃ち敵弾を避ける「スペースインベーダーみたいな」ゲームジャンルの総称。
(注5Bb)シューティング:上記5Baを参照。ゲーセンの名残が強いが、回転率の悪さ等を理由に当のゲーセンから疎まれてきた。
(注5Bc)シューティング:上記5Ba,5Bbを参照。かくしてオワコン呼ばわりされて久しいが、未だDLゲームを中心にリリースは続く。
(注5Ca)ライジング:かつて存在し、魔法大作戦を作ったゲーム会社。ぷよぷよのコンパイルから独立したスタッフが設立。
(注5Da)M2ショットトリガーズ:エムツーによって、主に過去の名作を復刻するプロジェクトのブランド。
(注5Db)M2ショットトリガーズ:上記5Daを参照。他は禁欲主義、ダンスエナジー、そして固い決意を要する地獄のラインナップ。
(注5Ea)メインショット:アイテムを取らずとも最初から撃てる武器。コインを取り続けて最大6段階までパワーアップ可能。
(注5Fa)ボム:本作での正式名称は「超魔法ボンバー」。数に限りがあるが、敵に大ダメージを与え、かつ敵弾を消去する。
(注5Ga)オートボム:ボムのストックが1個でも有る時、やられても強制的に1〜2個のボムを使って生き延びる。
「縦シュー(注6Aa)」の多くは2人同時プレイが可能ですが、あまり有難がられる事はありませんでした。
何故なら、敵が強くなり、かつ敵の攻撃が1Pと2Pに分散してしまい、1人でプレイしている時の攻略が全く通じない為です。
事実、商売的な理由で仕方なく2人同時プレイを可能としたに過ぎないとされ、さほど練られず地味な存在となっていました。
それは「魔法大作戦(注6Ba)」とて例外ではありませんが、その代わりか面クリア後の掛け合いが練られています。
具体的には、キャラの組み合わせは勿論の事、同じキャラでも、どちらが1Pか2Pかで掛け合いが変化するのです。
これが当時のパンフレットにて「脅威のボケツッコミシステム搭載!」と宣伝された、との事です。
しかし、それも虚しく全くと言って良いほど知られず、仮に知られたとしても全て堪能するにはハードルが高すぎたのでした。
↓同じキャラでも掛け合いの方向が180度かわる例。
そんな悩みとも「DUALモード(注6Ca)」でオサラバです。それに留まらず、副産物的に3種類もの特色が生まれたのです。
第1の特色は、テクニカルな操作です。
もともと「魔法大作戦(注6Bb)」は操作やルールがシンプルである反面、テクニカルさを好む層には物足りないかも知れません。
それとは別に、シンプル故に「サブショット(注6Da)」の切り替えに融通が利かず、少なからず難易度に響いていました。
そこでDUALモードでは、これらの課題を克服するテクニカルな操作を盛り込むに至ったのです。
専用のコントロールボタンを押し続ける事で、常に一定の法則で動く2P側を、また別の法則で動かしたり止めたり出来ます。
また、サブ切り替えボタンを押すだけで、いつでも好きなサブショットを使う事が出来るのです。
これらを活用すれば分担して敵を瞬殺したり、自分を守る盾としたりと、よりテクニカルな戦術が可能となるのです。
↓2P側は無敵なり。
第2の特色は、ミラクル級のスコア稼ぎです。
少なくとも万人にとって、アーケード版の「魔法大作戦(注6Bc)」はスコア稼ぎが楽しいゲームとは言えませんでした。
基本的に出てくる敵を倒してスコアを増やすのみで、より稼ぐには粘れる所でチマチマ時間を掛けて敵を倒す他ありませんでした。
これはこれで独特の緊張感がありますが、大方やる側も見る側も苦行をしている感覚は否めない事でしょう。
そこで「DUALモード(注6Cb)」では、スコア稼ぎの概念を根底から覆す事で、チマチマした苦行からの脱却を図ったのです。
道中に隠された妖精を見つけて回収する事で、爆発的にスコアが上がり、かつイナゴの大群の様に敵が出てくるのです。
これにより1面クリアの時点で、アーケード版の全クリに匹敵する、文字通り桁違いのスコアを叩き出せるのです。
そして、全ての妖精を回収できれば、次の面で「裏(注6Ea)」に突入し超高難度となる代わりにスコアが、うなぎ上りとなるのです。
↓妖精の場所はマップを参照。縦画面では不利かも。
最後に、表裏一体の難易度です。
どちらかと言えばアーケード版の2周目は、マニア向けの高難度と考えても、楽しさより苦しさが目立つ作りでした。
何故なら敵が非常に硬く、やられると「ボム(注6Fa)」に加え「サブショット(注6Db)」までも完全に失う、甚大な損害がある為です。
そこで、「DUALモード(注6Cc)」では歯応えある高難度と楽しさを両立した方向へと、舵を切ったのです。
具体的には、まず終始サブショット等が最強で、かつ他のモードと同じく「オートボム(注6Ga)」を搭載しており非常に強力です。
続いて、たとえ「裏(注6Eb)」に突入したとしても決して敵が硬くなる事は、ありません。
それでいて時に2周目をも凌ぐ程の激しい敵の攻撃、ハイパーインフレのスコア、そして夥しい数の敵、敵、敵。
これこそ魔法大作戦が追求してきた、パワー勝負のハチャメチャ感の極致なのです。
↓オートボム中に、裏を続けるか降りるか選べ!
以上より、「DUALモード(注6Cd)」は、「魔法大作戦(注6Bd)」が持つパワー勝負のハチャメチャ感を、さらに推し進めたゲームです。
とりわけ2P側を間接的に操る疑似的な2人同時プレイは、「縦シュー(注6Ab)」全体を見渡しても極めて珍しいです。
それだけ 大胆に変えつつも本質を損なわず洗練した作りは、まさしく「魔法大作戦Rev.2017」と呼ぶに相応しい一品なのです。
↓別のキャラの動きに変える事も可能。
(注6Aa)縦シュー:「縦スクロールシューティング」の略称。敵味方が縦に正対し、進みつつ敵を撃ち敵弾を避けるゲームジャンル。
(注6Ab)縦シュー:上記6Aaを参照。中には1人で2人分のコントローラを操作して同時プレイする強者も。
(注6Ba)魔法大作戦:本レビューで解説。ファンタジーとスチームパンクを組み合わせたRPG的な世界観が特徴。
(注6Bb)魔法大作戦:上記6Baを参照。ちなみにゲーセンと異なり、PS4版は全てのモードでフルオート射撃を標準装備。
(注6Bc)魔法大作戦:上記6Ba,6Bbを参照。ただ、あまり粘り過ぎると難しくなるので程々に。
(注6Bd)魔法大作戦:上記6Ba〜6Bcを参照。もともと左右にスクロールしない仕様もまた、DUALモード制作の切っ掛けとなった。
(注6Ca)DUALモード:PS4版で追加された、1人で疑似的な2人同時プレイを行う、全く新しいモード。
(注6Cb)DUALモード:上記6Caを参照。打って変わってボスを素早く倒すとボーナスが入るので、無駄な粘りが無用に。
(注6Cc)DUALモード:上記6Ca,6Cbを参照。スコアで残機は増えないが、偶数面のボス撃破後に1UPアイテムを貰える。
(注6Cd)DUALモード:上記6Ca〜6Ccを参照。ちなみにボタンコンフィグの中の「START」がサブ切り替えボタンとなる。
(注6Da)サブショット:魔導書の様なアイテムを取って初めて撃てる武器。前方集中、広範囲、追跡の3種類が存在。
(注6Db)サブショット:上記6Daを参照。もちろんDUALモードでは、やられてもサブショットを失う事は無い。
(注6Ea)裏:突入している間、難易度グラフが100%となる危険な状態。何もしなくてもスコアがグングン増えていく。
(注6Eb)裏:上記6Eaを参照。通常はオートボムで表に戻るが、発動中にボムのボタンを押し続ける事で、裏に居続けられる。
(注6Fa)ボム:本作での正式名称は「超魔法ボンバー」。数に限りがあるが、敵に大ダメージを与え、かつ敵弾を消去する。
(注6Ga)オートボム:ボムのストックが1個でも有る時、やられても強制的に1〜2個のボムを使って生き延びる。
数ある「縦シュー(注7A)」の中でも「魔法大作戦(注7B)」は、キャッチーな世界観やパワー勝負のハチャメチャ感に秀でています。
縦シューでは珍しい、ファンタジーとスチームパンクを組み合わせた世界観を、イラストも併せて余す所なく表現されています。
また、フルパワーになり易く強力な武器や大量の「ボム(注7C)」、残機で一方的に敵を蹂躙する感情的な快感も見逃せません。
敵とて黙っておらず後半では、こちらが一方的に蹂躙されかねません。そんなパワーをパワーで押し切る力強さが魅力的です。
一方アーケード版は、うっかりミスが非常に痛かったのですが、PS4版なら痛くなく遊び易いモードが別に用意されています。
何より「DUALモード(注7D)」は、縦シュー全体でも珍しい独自性と、より洗練された魔法大作戦の本質が両立した力作なのです。
以上より、魔法大作戦はキャッチーな世界観が好き、パワーで押し切る力強さを堪能したい、という方にオススメです。
↓ここで安易に目を破壊すると…。
注釈一覧(専門用語を押して本文に移動)
(注7A)縦シュー:「縦スクロールシューティング」の略称。敵味方が縦に正対し、進みつつ敵を撃ち敵弾を避けるゲームジャンル。
(注7B)魔法大作戦:本レビューで解説。ファンタジーとスチームパンクを組み合わせたRPG的な世界観が特徴。
(注7C)ボム:本作での正式名称は「超魔法ボンバー」。数に限りがあるが、敵に大ダメージを与え、かつ敵弾を消去する。
(注7D)DUALモード:PS4版で追加された、1人で疑似的な2人同時プレイを行う、全く新しいモード。
どちらかと言えば僕は抱え落ちをしてしまいがちなので当初、魔法大作戦との相性は良い方ではありませんでした。
なまじ沢山ボムが手に入るだけに、抱え落ちの精神的ダメージはデカく、一時は1回やられた時点で捨てゲーする程でした。
そうでなくともノーミスでツムジ丸をボム連発で倒す事に囚われ過ぎて、他の難所でボムを惜しんで死ぬパターンの連続でした。
転機が訪れたのは2つの発見があってからです。1つ、思い切ってボムを使いまくっても意外と何とかなる事。
もう1つ、最初の1機は、いくら抱え落ちをしても意外と何とかなる事です。ここから精神的に楽になって1周クリア出来ました。
更に、段階式攻略法を見越して、一部を除き一番後ろで左右にのみ動くプレイをした所、6面まで来れて面白さを確信しました。
ある意味ボムを使い切ってから、どれだけ粘れるかが配分と同じくらい大事かも知れませんね。
↓ここは難所である一方、前方集中のサブショットで左右を往復するだけで良い事も。
DUALモードでは被弾しても裏に居続けられる仕様を聞いて、ヴァンパイアナイト(ナムコ)関連の掲示板を思い出しました。
そこには、ランクMAXの最高難度のまま行きたいのに喰らってランクが下がって易しくなるのが不満、との書き込みがありました。
それに対し、君が下手なのが悪い、易しくならなきゃク〇ゲーだぞ、等と突っ込まれていました。
どちらの言い分も一理あると思いますが、両者の意見を尊重した結果がDUALモードの仕様なんだよなあ、と感心した物です。
個人的には難易度的にもスコア的にも、DUALモードは裏が楽しいと思うので、この仕様には本当に助かっています。
もちろん被弾してばかりですが、オートボムがあるし2P側が守ってくれるし、何より敵のワラワラ感が最高なんですよね。
ただ、縦置きモニターで遊ぶ方はマップを見られないので妖精を取り辛く、裏にも行き辛い点が気掛かりです。
もし自分が縦置きモニター派だったら怒ったと思いますが、それでも猛者は妖精の位置を完璧に覚えたりするのでしょうか。
↓マップがあっても初見で全て取るのも楽じゃない。
・魔法大作戦 段階式攻略法
本サイトにおける魔法大作戦アーケード攻略の目次です。
同社の縦シューにして、M2ショットトリガーズ第1弾です。隠しで魔法大作戦のキャラが登場します。
・怒首領蜂大復活
オートボムといい敵の攻撃を飲み込む武器といい、魔法大作戦よろしくパワー勝負のハチャメチャ感を追求した縦シューです。
検索等で来て頂いたついでに、ご意見ご感想などを残して頂けると嬉しいですが、事前に三か条を一読ください。
6月のレビューは、シューティングと格ゲーが交互である点は全く意識しておらず、偶然そうなっていた事に最近、気付きました。
という訳で今年の6月は、M2ショットトリガーズの話題が熱い事もあって魔法大作戦に決めました。
今回は、前回のレビューで得た3つの教訓を活かして作りました。 1つ、正式公開の前月末までに☆以上を完成させる事。
2つ、可能な限り、これまで通りの長文を書く事。そして最後に、シューティングの楽しさを詳しく言及する事です。
いずれも概ね上出来と自負していますが、その道のりは決して楽ではありませんでした。
まず、アプリやスリープのエラーで、数時間かけて書いた文章がパーとなる事も数回あり、モチベーションに大きく響きました。
続いて意外と時間を喰ったのが注釈でした。以前は本文と注釈を並行して作りましたが、修正の手間が非常に大きく大変でした。
そこで、今回は注釈を後回しとしました。結果、修正の手間は省けましたが、後から丸ごと注釈を作るのも心理的に辛かった。
これらのバランス取りは今後の課題とします。文章を1項目つくるごとに注釈するのが無難かなあ。
ただ、完成が早ければ正式公開までが格段に楽ですし、やはり書きたい事を書けるだけ書くのは、苦しくも楽しい物です。
今回のレビューで、やっと4ヵ月も続いた燃え尽き症候群から脱却できた気分ですよ。
2018/06/16 正式公開
2018/05/30〜31 第1回ロケテストもどき実施