ダンジョンズ&ドラゴンズ
シャドーオーバーミスタラ
メーカー | カプコン |
対応機種 | プレイステーション3ほか |
ジャンル | アクション |
目次
最低限ここだけでも読んで頂きたい項目には「★」、出来れば合わせて読んで頂きたい項目には「☆」が付いています。
それらを読んでもなお飽き足らないのであれば、末尾が空欄の項目も是非読んで下さい。
シャドーオーバーミスタラの概要を解説します。
前作タワーオブドゥームとは一線を画す、派手で爽快感あふれる戦闘を解説します。
やや難のあったタワーオブドゥームのアイテム管理を、いかに快適に出来るよう改良したか解説します。
タワーオブドゥームとは、また違ったRPGらしさを追求して生まれた、やり込み要素を解説します。
タワーオブドゥームと比べて、変質した難易度の傾向を考察します。
シャドーオーバーミスタラが、いかに汎用筐体のビデオゲームで出来る重厚長大路線を、限界まで追求したか考察します。
これまでの解説から、シャドーオーバーミスタラがどんなゲームで、どんな良さがあって、どんな方に向いているかを解説します。
文字通り、シャドーオーバーミスタラに関する、個人的な思い出話です。
本ページと何かしらの関連性や共通点を持つコンテンツを3つ紹介します。あと掲示板もどうぞ。
本ページについての、あとがきです。
「ダンジョンズ&ドラゴンズ シャドーオーバーミスタラ(ミスタラ)」は、カプコンが1996年にアーケードで発売したベルトフロアです。
前作タワーオブドゥーム(ドゥーム)は、格ゲー並の多彩なアクションと戦略性に秀でたRPGらしさを融合した力作です。
それに加え、敵の特性などの再現度は原作のD&Dファンをも唸らせる等、全世界の熱心なファンから人気を博しました。
ところが、慎重さ第一の余りにストイックすぎる作風などにより、いちベルトフロアとしてはハードルが高かった点も事実です。
そこで、ミスタラではドゥームとは異なる、ベルトフロアらしく敵をバッタバッタと倒す爽快感を追求した作風へと変化を遂げたのです。
もちろん、新たなキャラに新たな武器防具や魔法の追加、そして豊富なやり込み要素など、RPGらしさも大きく強化されています。
結果、ドゥームに挫折した層やD&Dを知らない層、そして格ゲーに飽きた層を取り込む等、ドゥーム以上のヒット作となったのです。
一方で、より快適で、より高度で、より深く感動的な作風を追求するには最早、ビデオゲームの枠組みでは限界に達していました。
かくしてミスタラを機に、ミスタラのような重厚長大路線を売りとするゲームは、家庭用ゲームへと軸足を移す事となるのです。
それはつまり、後にビデオゲームの衰退を決定づけ、ゲーセンの在り方さえも大きな岐路に立たされる事を意味しているのです。
↓格ゲー円熟期かつポリゴン勃興期という難しい時期でもあった。
ドゥームの作風は緊張感に秀でる一方、敵をバッタバッタと倒せず絵面的にも地味で爽快感に欠ける嫌いは否めませんでした。
他にも時間の掛かるアイテム拾い、出すのに一拍遅れる重要なアクション、そして過剰なランダム要素など、不便な点もあります。
そこで、ミスタラでは3種類の変更により、ドゥームに欠けていたベルトフロアらしい爽快感を大幅に高めたのです。
第1の変更は、プレイヤーキャラの攻撃の大幅な強化です。
ドゥームのプレイヤーキャラはアクションこそ豊富なものの、貧弱を絵に描いたような性能と言わざるを得ませんでした。
リーチは短くA連打の連続技は空振ってばかりで、奇襲の立ち上がり斬りも出すのにワンテンポ遅れる体たらくでした。
その割には、運が悪いと敵を転ばせられず、隙だらけとなる欠点があります。対空攻撃もアイテムが無ければ心許ないです。
また、倒れた敵への追い打ちも、しゃがむか立ち上がり斬りをするか、はたまた奥へ回り込む手間が掛かりました。
ついでに、体力を少し消費する代わりに、無敵状態で周りの敵を蹴散らすメガクラッシュもありませんでした。
こんな性能で従来のベルトフロアのように猪突猛進をしては一瞬で満身創痍なので、慎重さ第一の戦闘を余儀なくされた訳です。
そこで、ミスタラではプレイヤーキャラの攻撃を大幅に強化する事で、猪突猛進でも何とかなる余裕をもたらしたのです。
リーチが大きく伸び、連続技も一定の段数までは確実に繋がるため、ビクつく事なく敵をバッタバッタと倒していけます。
もちろん、追い打ちも立ったまま前方から出来るようになったため、A連打でまとめてザクザク斬る事だって出来ます。
さらに、立ち上がり斬りも「波動斬り」なる必殺技へと生まれ変わり、残像を纏うほどの太刀筋に恥じない強化を遂げています。
具体的には、↓\(前方)+Aで即座に出せるようになり、敵を確実に吹っ飛ばし、かつ連続技に組み込めるようになったのです。
一応、踏み込みが浅くなり奇襲や追い打ちには使い辛くなったものの、それを補って有り余る実用性は健在です。
弱かった対空対策もバッチリです。↓↑+Aで出せる新必殺技の「対空斬り」で空中の敵を返り討ちにする他、連続技にも使えます。
仮に敵に取り囲まれてボコボコにされそうになったとしても、AB同時押しでメガクラッシュを出せるので一安心です。
このように、ミスタラのプレイヤーキャラはリーチや連続技、そして新技のキレにおいて、目覚ましい強化を遂げたのです。
その強さで猪突猛進し、派手な連続技で敵をバッタバッタと倒していく絵面は、正にベルトフロアらしい爽快感をもたらす事でしょう。
↓波動斬りから対空斬りが繋がるため、さらに爽快。
第2の変更は、プレイヤーキャラの機動力や利便性の大幅な強化です。
ドゥームのプレイヤーキャラの貧弱ぶりは攻撃だけでなく、機動力も挙げられます。
足は遅く→→(前方)のダッシュでは小回りが利かず、緊急回避のスライディングも出すのにワンテンポ遅れる体たらくでした。
そのスライディングも長めの距離を少し緩やかに行うため、時に回避が間に合わなかったり行き過ぎたりする危険性もありました。
一応、移動速度アップの「スピードブーツ」があれば足の速さと小回りを両立できますが、運が悪ければ、すぐ壊れてしまいます。
こんな性能で乱戦となれば一瞬でボコボコにされるため、そもそも乱戦とならないよう慎重に戦わねばならなかったのです。
ついでに、お金や体力回復のポーションを拾うにも時間が掛かるため、斬ろうとして拾って逆に斬られる事態も多く不便でした。
そこで、ミスタラではプレイヤーキャラの機動力を大幅に強化する事で、乱戦となっても何とかなる余裕をもたらしたのです。
スピードブーツがなくても十分に足が速くなり、ダッシュも一定距離で止まってしまうとはいえ急停止で少し小回りを利かせられます。
何より、スライディングの強化が著しいです。↓\(前方)+Bで即座に出せるようになった点は序の口です。
移動が素早くなり、かつBを押す長さで2段階に移動距離を調節でき、さらにお金なども纏めて拾えるようになったのです。
つまり、ドゥーム以上に緊急回避に役立つほか、散らばったお金を掃除しやすくなり、よりストレスなく斬れる事を意味します。
このように、ミスタラのプレイヤーキャラはスライディングを筆頭に、機動力や利便性の大幅な強化を果たしたのです。
それを活かして敵の激しい攻撃を素早く回避しつつ派手な連続技を叩き込む爽快感は、歴代ベルトフロアでも屈指の楽しさです。
↓ボス撃破後のアイテム拾いもスライディングで楽々。
最後に、過剰なランダム要素の見直しです。
ドゥームは原作再現の一環として、敵味方のダメージ量や回復量、そして装備品の破損が毎回ランダムで決まる仕様でした。
ただ、ベルトフロアとしては理不尽そのものでした。運が悪いと直ぐ致命傷となったり装備品が壊れたり、あまり回復できなかったり。
そして、重要な謎解きのヒントや答えもランダムだったりと、必要以上に難易度やハードルを高めていた嫌いは否めませんでした。
そこで、ミスタラでは過剰だったランダム要素を見直す事で、難易度に直結する理不尽さの軽減に踏み切ったのです。
条件が同じであれば敵味方のダメージ量や回復量のばらつきが無くなったため、十分に余裕を持って臨めるようになっています。
さらに、ときどき通常攻撃でもクリティカルヒットとなる等、発動すると嬉しいランダム要素もあります。謎解きも易しくなっています。
一方、ランダムで装備品が壊れる点は同じですが、壊れない装備品もあるため、そちらを選べば破損のリスクを減らせます。
このように、ミスタラではダメージ量などや装備品の破損による難易度高騰といった理不尽なランダム要素を見直したのです。
それはつまり、より体力に余裕が出来た分、ベルトフロアらしい大胆かつ爽快なバトルを繰り広げられる事を意味しているのです。
↓属性の威力を高めるロッド系は壊れないのでローリスク。
以上より、ミスタラではプレイヤーキャラの性能を大幅に強化し、かつランダム要素を見直す事で、ハードルを大きく下げたのです。
一方で、ドゥームのファンからは、よくあるタイプのベルトフロアになってD&Dらしさが薄れた、等と苦言を呈される事もあります。
そうでなくても、格ゲーのような忙しないレバー操作が苦手な方には辛い面もある事でしょう。
にも関わらず、D&Dのベルトフロアで、より多くのファン層を獲得しているのはミスタラなのです。
つまり、D&Dらしいストイックさよりも剣と魔法の世界でヒーローになりきる快感を、プレイヤーが求めていた事を意味するのです。
↓隅っこに吹き飛ばした敵を追撃できるのも直感的で気持ち良い。
ドゥームの面白さの一つに、多彩なアイテムや魔法を戦略的に使いこなし、戦局を有利に進めていくRPGらしさが挙げられます。
ただ、お世辞にもドゥームのアイテム管理は快適であったとは言い難いものでした。
そこで、ミスタラでは新たにリングコマンドを採用する事で、アイテム管理の快適さの向上を図ったのです。
リングコマンドによる改良点は3種類あります。
第1の改良点は、視認性に秀でる絵の表示です。
ドゥームではスタンバイ中のアイテムのみ画面下に文字と色で小さく表示される仕様でした。
そのため、いま他にどんなアイテムを持っているか、どんな順番で並んでいるか、瞬時に確認する事が出来ませんでした。
仮に確認できたとしても、ベルトフロア故の激しい戦闘中に小さな文字列を瞬時に認識するのは難しいです。
よって、戦闘中に焦る余り必要なアイテムを見つけられず余計焦り、ピンチで更に焦り、という悪循環を招く事となったのです。
そこで、ミスタラではリングコマンドの採用により、これらの欠点を改善するに至ったのです。
具体的にはCボタン一つで、いま他にどんなアイテムを持っているか、どんな順番で並んでいるか、瞬時に確認する事が出来ます。
さらに、プレイヤーキャラを中心に絵で表示されるため、戦闘中でも簡単に必要なアイテムを見つけて冷静な判断が出来ます。
それ故に一度に持てるアイテム数が限られた点も含め、より戦略的な戦闘を楽しめるだけの快適性がミスタラにはあるのです。
↓同類アイテムの中には見分けの付きにくい絵もある点には注意。
第2の改良点は、アイテムと魔法の区分けです。
ドゥームでは拾ったアイテムや魔法が区分けされる事なく、一つのフォルダに詰め込まれていました。
また、ストックが無いアイテムや魔法はスタンバイ中のアイテムから数えて一番後ろに配置されました。
そのため、単にアイテムを拾っていくのではアイテムや魔法が、ごちゃ混ぜとなって余計探しにくくなる事態となったのです。
そこで、ミスタラではリングコマンドに合わせてアイテムや魔法を区分けする事で、こうした事態の改善を図ったのです。
魔法系キャラのみアイテム、魔法1、魔法2と区分けられており、リングコマンドを開いてBボタンで切り替えられます。
もちろん、どれがどの魔法かも絵で表示されるため、より快適に魔法を駆使する楽しさが増しているのです。
↓ストックが空、もしくは未修得の魔法はモノクロで表示。
最後に、ボタン配置の変更です。
リングコマンドとは関係ありませんが、ドゥームでは下表のようなボタン配置でした。
A:攻撃 | B:ジャンプ |
D:アイテム使用 | C:アイテム選択 |
注目して頂きたい点はCボタンです。アーケードコンパネでCボタンを押すには、手の位置をずらす等の手間が生じました。
当然、手をずらしている間、攻撃やジャンプ等の操作が疎かとなるし、他の指では押し辛い等、操作性にも影響していました。
まして、ミスタラにはリングコマンドや区分けの切り替えもあるため、このままでは余計面倒な事となってしまいます。
そこで、ミスタラでは下表のようにボタン配置を変える事で、こうした問題点の改善を試みたのです。
A | B | C:アイテム選択 |
D |
CボタンがBの右隣に移った事で、手の位置をずらさずとも薬指で簡単に押せるため、攻撃やスライディング等も同時に出来ます。
また、区分けの切り替えも容易なので、特に魔法系キャラ使いにとっては、地味ながらも重要な改良点と言えましょう。
↓余談だが、一部ゲーセンでCとDが逆の場合もあるとの事。
以上より、ミスタラではリングコマンドを採用する事で、手持ちのアイテムや魔法を絵で見やすく、かつ探しやすくしたのです。
ただし、必ずしも良い面ばかりではなく、ドゥームと比べてアイテムの選択から使用までに時間が掛かりがちな面もあります。
具体的には、ミスタラでアイテムを切り替えるのに、最低でも下記3種類の作業を要します。
(1)Cボタンでリングコマンドを開く
(2)Cボタンで選択
(3)AもしくはDボタンでリングコマンドを閉じる
要するに、ドゥームではCボタン1回で済む事でも、ミスタラではC、C、Dと3回もボタンを押さねばならないのです。
リングコマンドを開いたり選んだりする際にアニメーションも入るため、それだけ時間が掛かってしまうのです。
さらに、ドゥームと異なり使い切っても空欄が埋まらないため、空欄が多いほど相対的にアイテムの切り替えに手間が掛かります。
魔法に関しても、ドゥームではCボタンだけで選べるのに、ミスタラではBボタンも使わねばならない、との見方も出来ます。
このように、リングコマンドには操作の煩雑化やレスポンス性の低下などといった、新たな欠点がある点も事実です。
よって、中にはドゥームの方が良かった、というファンもいるのかも知れません。
↓リングコマンド展開中、ジャンプが出来なくなる点も辛い。
そのような欠点を考えても、ミスタラがリングコマンドを採用した点は、まさに英断という他ないのです。
ドゥームではアイテム管理の不便さ故に、一度に複数のアイテムを使い分ける戦略性を味わい辛かったと言わざるを得ません。
つまり、予め不要なアイテムを使い切ったり、極力アイテムを切り替えず戦ったりする消極的なプレイを余儀なくされたのです。
そこで、ミスタラではリングコマンドにより、ドゥームの欠点を改善し、多くのプレイヤーから支持を受けるに至ったのです。
とはいえ、ドゥームもミスタラも、アイテムに使うボタン数の少なさ故に一長一短で、まだまだ課題を残した点は否めません。
ドゥーム並のレスポンス性とミスタラ並の快適性を両立するには、もはや2〜3つのボタンでは足りなくなっていたのです。
以後、ゲーム業界は両立や発展に向けて、よりボタン数の多いデバイスやタッチパネルの採用へと、舵を切っていく事となるのです。
↓なお、元ネタの某ゲームを参考としたかは不明。
残念ながら ミスタラは、ドゥームにあった探索要素や演出といったRPGらしさが減少傾向にあります。
そこで、ミスタラではドゥームとは違った、やり込みを重視したRPGらしさを追求する方向へと舵を切る事となったのです。
ミスタラが追求したRPGらしさは3種類あります。
第1のRPGらしさは、武器や装備品の追加です。
ドゥームでも、進行に合わせて強い武器や装備品を手に入れる要素はありましたが、単にパラメーターが変わるだけでした。
そこで、ミスタラでは性能そのものが変化する、多彩な武器や装備品が追加されたのです。
武器だけ見ても、特定のキャラが装備すれば二刀流となり、ガードできない代わりに華麗なコンボ技を決められるショートソード。
1発で敵を転ばせられ、かつ魔法しか効かないガーゴイルを攻撃できる雷、炎、そして氷の属性を帯びた魔法剣。
装備品となると、ドゥームと同じくパラメーターを上げる物の他にも、宙に浮けるレビテーションブーツ。
それぞれ敵の魔法、炎攻撃、マヒ・石化を無力化するスペルターニングリング、レジストファイヤーリング、そしてオーブ。
これらのユニークな武器や装備品を使いこなせば、よりプレイに幅が生まれる事でしょう。
他にも、伝説の剣を筆頭に特定の場所で、かつ特定の条件を満たした時のみ手に入れられる武器や装備品も数多くあります。
よって、ゲームを楽にする他にも、全ての武器や装備品の所在を明らかにする、やり込み要素の拡充にも繋がっているのです。
なお、武器を持てば持つほど、アイテム欄を圧迫する事となるし、装備品も同じ部位の物は1つしか装備できません。
そのため、状況に応じて必要な武器や装備品を見極める判断力も求められるのです。
↓冒頭の名前入力で得られる装備品が、命運を大きく左右する。
第2のRPGらしさは、情報収集です。
ドゥームでも、店員から次の面や世界観についての情報を聞けましたが、あまり役に立つとは言い難いものでした。
そこで、ミスタラでは次の面などに限らず、様々な事柄についての情報を聞けるようになったのです。
序盤の特定ルートでは魔法剣や伝説の剣、そして最終ボス等についての情報を聞けます。
続いて、中盤では特定の武器や装備品の効果に加え、特定キャラのみボス敵の特性など、より具体的な情報を知る事が出来ます。
さらに、ショップでは一部キャラの独自の性質も聞く事が出来るのです。世界観に関する情報もあります。
断片的ではありますが、ドゥームよりかはゲームに必要な知識を少しでもゲーム内で取り入れられる親切さは、有難い事でしょう。
↓壮大な物語へのワクワク感を煽る秀逸な語り。
最後に、ミスタラで加わった盗賊キャラ「シーフ」の盗みです。
シーフにはダッシュして敵にぶつかる事で、一定確率でアイテムを盗める特性があります。
盗めるアイテムの中には、後半でしか手に入らない強力なアイテムや、盗みでしか手に入らないレアアイテムも存在します。
盗みが攻略から収集要素のコンプリートまで欠かせない点は、まさしくRPGさながらなのです。
↓敵によっては盗めるアイテムが2通りあり。
このように、ミスタラでは多彩な武器や装備品、情報収集、そして盗みの追加により、ドゥームとは違ったRPGらしさがあります。
それはつまり、進行を楽にする事からレアアイテム入手を目指すプレイまで、様々な目標で繰り返し楽しめる事を意味するのです。
↓この呪われた剣の正体は?
これまでに述べた通り、ドゥームに欠けていたベルトフロアとしての爽快感やアイテム管理の快適性を、ミスタラは追求して来ました。
確かに、それでドゥームより間口は広がりましたが、少なくとも序盤の難易度は、むしろドゥームよりも高い部類に入ります。
2面のトリンタン村の道中までは易しいですが、ボスとなるとカプコン伝統の2面殺しの例に漏れず、急激に難しくなるのです。
戦車が往復して突進する上に、たまに投石や火炎なども交えるため、初心者には手も足も出せません。
その難しさたるや、ドゥームをノーコンクリアする猛者がミスタラの2面ボスに敗れた、という逸話まである程です。
続く3面のBルートも、強制スクロールの上に、適切なコースを辿れなければ延々と戦わされた挙句ペナルティを受ける厳しさです。
もちろんボスも非常に強く、初心者には手も足も出せません。Bルートは大金を取れて楽、という喧伝も寝耳に水なのです。
ではシンプルなAルートはというと、Bルートと比較にならないほどボスが強く、この時点で初心者は八方塞がりです。
よしんば3面をクリアできても、4面でも非常に苦しいボス戦が2連続で、ボヤボヤしていると強制的に特定ルートへ落とされます。
そのルートで、訳も分からず前に進むと、正攻法では相手にならないボスと遭遇し、一方的にタコ殴りにされて終わりです。
コンティニューしながら進めるプレイヤーも、この容赦ない難易度を前に、コンティニューする気も失くしてしまう事でしょう。
一応、これでも初心者への救済措置が全くない訳ではありません。
まず、「ウ」などタイプCの名前を入れれば、他のタイプよりも被ダメージ量が減り、それだけ楽になります。
続いて、2面で全体攻撃できる強力なアイテムを取れるのに加え、運よく鍵が出れば隠し通路で装備品を調達できるのです。
ただ、その恩恵に与るには、それなりの予備知識が必要であるし、恩恵自体も焼け石に水でしかありません。
そもそもドゥームの時からハードルの高い作風で初心者向けではないのに、ミスタラで悪化してしまっている面もあるのです。
名前入力による装備品の変化や、一旦アイテムを使い切っても自動で切り替わらず所持数制限がある点などが、最たる例です。
↓武器を拾ったところで初心者には、どうしようもないのだ。
ただ、ひとたびタイプCにして、大金を取って序盤をクリア出来るだけの技術や知識を身につけると、一転して簡単となるのです。
それこそドゥームとは比較にならないほど中盤からが楽になって、簡単にノーコンクリア出来る逆転現象が起きているのです。
何故なら、中盤からはルート次第で、強力な武器や装備品、そしてアイテムが多く手に入るためです。
中でも突出して強力なのは、魔法剣とレジストファイヤーリング、そして「大オイル」という強化版の火炎瓶です。
それらの力を借りれば、正攻法では手こずるようなボスでも大半の攻撃を無力化して完封もしくは瞬殺できる事もあるのです。
さらに、特定のルートで、回復アイテムや特定ボスの弱点である雷の魔法を買い込めば鬼に金棒、さらに簡単です。
逆に言えば、それらが無ければ中盤以降も変わらず激ムズどころか無理ゲーと、難易度の変化が極端で大味と言う他ありません。
確かにドゥームでも特定の装備品やアイテムがあるかで難易度が激変しますが、ミスタラはドゥーム以上に極端に変わるのです。
このような大味さ故に、ミスタラでは3分おきに死ぬ初心者と、1時間かけてノーコンクリアする上級者との二極化を招いたのです。
これがミスタラで言われる、ゲーセンで人気だけど回転率が悪くて稼がない、という伝聞の所以なのです。
↓大オイルで瞬殺できるが、し損なうと瞬殺されがち。
ただ、一概に大味だと切り捨てるには勿体ないほど、ミスタラはノーコンクリアの容易さや自由度の高さに秀でている点も事実です。
確かに序盤は激ムズですが、逆に言えば序盤をクリアできるだけの能力があれば、十分にノーコンクリアを狙えるのです。
その能力も、必殺技やスライディングといった仰々しいアクションが占める割合は小さく、ほぼ基礎的な操作だけで十分です。
それよりも、タイプCの名前や各種アイテムの効果、そしてアイテムを駆使するテクニック等といった知識が大きな割合を占めます。
その知識と必要なアクション、そして魔法剣さえ使いこなせば、必殺技やスライディングを使う事なくノーコンクリア出来ます。
逆に、必殺技やスライディングの精度を磨けば、必要以上に魔法剣などに頼る必要は無くなる訳です。
他にも、アイテム枠を減らしてでも強力な武器を持っていくか、それとも無難にアイテムを貯め込んでいくか。
ボス戦で瞬殺狙いに特化して準備するか、それとも後々に備えて、じっくり戦えるよう準備するか。
このように、様々なアプローチでノーコンクリアを狙えるだけのゆとりが、ミスタラにはあるのです。
また、序盤の激ムズぶりも、上達しても油断できない一面を持つし、あえて難しいルートを辿って制覇する楽しみもあります。
総じてドゥームと比べると知識が重要で、それ次第でドゥームより難しくなったり簡単になったりするのが、ミスタラの傾向なのです。
これを大味と取るか、ベルトフロアが苦手でも勉強でカバーできる、努力が報われると取るかは、あなた次第なのです。
↓運が良ければ魔法剣で斬るだけの簡単なお仕事です。
これまでに解説した通りミスタラは、ただでさえ重厚長大であったドゥームを、さらに重厚長大とした力作です。
多彩かつ派手なアクション、豊富な武器・装備品・アイテムがもたらす自由度とボリュームは、ビデオゲームではトップクラスです。
ただ、言い換えると2種類の点において、ビデオゲームの限界が垣間見える格好ともなったのです。
第1の限界は、ボタン数の少なさから来る操作性です。
ドゥームと同じ4ボタンで世に出されたミスタラも、企画段階では下表のようにストIIと同じ6ボタンのゲームでした。
A | B | C |
X | Y | Z |
そのため、下記の通り、ボタン配置も大きく異なりました。
(A)独自アクション(ガード、飛び道具、魔法の切り替え等)
(B)攻撃
(C)ジャンプ
(X、Y、Z)アイテム1、2、3の使用
注目すべきは独自アクションとアイテムです。
製品版ではリングコマンドを経由するキャラごとの独自アクションも、元々はボタン1つで即座に行えるはずでした。
同じくリングコマンドを経由する魔法も、元々はAB同時押し、もしくは魔法使いキャラのみBボタンで即座に使えるはずでした。
さらにリングコマンドを経由するアイテムも、元々はX、Y、Zで、各ボタンにセットしたアイテムを直ぐ使えるはずでした。
つまり、アイテムや魔法の使用にはリングコマンドを経由せず、製品版よりも多い最大5つものボタンを使うはずでした。
仮に、この仕様が実現していたら、製品版よりも煩雑さが減り、よりベルトフロアらしくキビキビと動かせた事でしょう。
ところが、6ボタンではボタンのI/O不足で4人同時プレイが出来ず、止む無く製品版の仕様に落ち着く事となるのです。
これによりリングコマンドを経由する分、アイテム等を使うまでに多少の時間が掛かる等、操作性に大きな影響を及ぼしています。
ボタンが少ない事には、攻撃よりアイテム拾いや看板読みを優先したり別のアクションが暴発したり、との不便さも改善できません。
あるいは、序盤が激ムズとなった要因の一つに、この仕様変更があったのかも知れません。
余談ですが、1枚の基板で済ませたために、4人プレイできる設定では体力と装備品を同時に表示できず不便です。
推測ですが、もし2枚の基板を繋ぐ仕様なら、予定通り6ボタンに出来、かつ4人分の体力と装備品も同時に表示できたはずです。
ただ、それではゲーセン側の負担が大きく採算が合わない、との懸念から製品版通り1枚の基板で済ませたのではないでしょうか。
↓独自アクションの飛び道具と別のアイテムを併用、という芸当も不可能に。
第2の限界は、ストーリー的なボリュームです。
ゲーム中に語られるストーリー展開や住民からの情報によって、ある程度は世界観やストーリーの補間をする事は出来ます。
ただ、ビデオゲームである以上、尺の都合により語られる内容は、かなり断片的となってしまっています。
それでも、クリアまでに掛かる時間は1時間以上と、ビデオゲームとしては、かなり長い部類に入ってしまっているのです。
当時、人気の格ゲーが1時間で2000円は稼いだであろう点を考えると、ミスタラの稼ぎは実に20分の1でしかないのです。
そこで、少しでもゲーセンに稼いで頂くために、操作性を犠牲にしてでも4人同時プレイを優先するしかなかったのです。
ただ、4人で遊ばれたとしても、1時間で400円しか稼がないため、4人で遊べるようにしたゲーセンは少なかったと考えられます。
そんな状況なので、もはやビデオゲームの枠組みでは、これ以上ボリュームたっぷりのストーリーの実現は不可能なのです。
以後、ストーリーやボリューム重視で回転率が悪いジャンルはゲーセンから淘汰され、家庭用へ活躍の場を移す事となるのです。
↓寄り道が出来る点も回転率の悪化に輪をかけていた。
以上より、操作性・ストーリー性と、導入コスト・回転率とのバランス的には、ミスタラでビデオゲームの限界に達したと考えられます。
製品版よりも更に操作性やストーリー性を高めると、導入コストや回転率が悪化し、余計ゲーセンに拒絶される事は必至です。
ただでさえ格ゲーを除くビデオゲームが冷遇されて久しい御時世、ゲーセンに導入してもらうのに、それではいけません。
そこで、ゲーセンの許容範囲内、かつビデオゲームの枠組みで出来る事を、ほぼ全てやり尽くしたゲームこそ、ミスタラなのです。
しかし、それほど苦心して作られたミスタラとて、回転率至上主義のゲーセンのニーズには合わず、淘汰される事となります。
これを受けてカプコンは翌年のバトルサーキットを最後に、8年もの間、ほぼ毎年作り続けてきたベルトフロアから手を引きました。
それに呼応するかの如く、格ゲーを除くビデオゲーム全体が時代遅れと見做され衰退し、淘汰されるのも時間の問題でした。
それを食い止めるべく、各社が積極的にビデオゲームをリリースするも、市場には受け入れられず長続きはしませんでした。
ビデオゲームが売れない現実を突き付けられた各社は、ゲーセン好みの高価な大型筐体や格ゲーに絞り込むしかありません。
それが出来ない会社はアーケード市場からの撤退を余儀なくされ、ジャンルの画一化や導入・運用コストの甚大化を招いたのです。
かくしてゲーセンはビデオゲームを冷遇してきたツケを払うかのように、徐々に自らを蝕む事となるのです。
↓ミスタラ自体もマニア向けが過ぎた嫌いは否めない。
ミスタラは、ドゥームのストイックさに付いていけず挫折した層に向けて、3つのアプローチを試みた一品です。
第1に、ベルトフロアとしての遊びやすさです。
必殺技も絡めた派手な連続技で敵をバッタバッタと倒す爽快感、素早く避けつつ散らばったお金を回収できる機動力に利便性。
そして、同じ条件ならダメージ量や回復量が変動しない公平性により、ドゥームより大きくハードルが下がりました。
第2に、アイテム管理の改善です。
視認性の高いリングコマンドでドゥームよりアイテム管理が快適となり、アイテムを使い分ける戦略性が増しました。
最後に、やり込み重視のRPGらしさです。
多種多様な武器や装備品、情報収集、そしてシーフの盗みにより、クリアだけでなくレアアイテムを探す遊び方も出来ました。
一方で、あまりに派手になり過ぎた作風に、知識次第で極端に変化する難易度など、ドゥームより大味な面も目立ちます。
さらに、ゲーセンに配慮する余り煮詰まらない操作性やストーリー性など、ビデオゲームの限界も垣間見える作りでもありました。
それでも、ミスタラは遊びやすさ、自由度、そしてボリュームに秀でた作風により、ドゥーム以上に多くファンを付けたのです。
以上より、ミスタラはファンタジーの世界観が好き、色々な遊び方が出来る奥深いゲームをしたい、という方にオススメです。
↓知れば知るほど楽しくなる、ゲーマーのためのゲームだ。
僕がミスタラを知ったのは10年前、ぷよぷよの「ハーピー」というキャラが切っ掛けでした。
当時、一瞬だけハーピーに入れ込んでいた時期に動画を漁っていたところ、ぷよぷよと全く関係ない動画が現れたのです。
その動画は一目でカプコンと分かる画風のファンタジーなベルトフロアで、元ネタに忠実な姿のハーピーと戦うものでした。
それを見て面白そう、と思って2年後、遂に今は亡きアリス金山なるゲーセンで対面するに至ったのです。
ただ、インストカードも何の知識も無かった当初は散々な結果に終始しました。
対空斬りの出し方も知らない、アイテムの使い方も知らない、まして名前で装備品が変わるのも知らない、と知らない尽くし。
音が聞こえ辛いなか淡々とザコを斬って2面ボスに瞬殺されて、何の爽快感も面白みも感じないまま席を立ちました。
それでも雰囲気やグラフィックに惹かれた僕は、ゲーセンで見かけてプレイしては瞬殺され、というのを5年くらい繰り返したのです。
↓他に、こんな切っ掛けでミスタラに触れた方がいるだろうか。
転機が訪れたのは2013年、ゲーセンのやり方や環境に辟易していた時の事でした。
ドゥームとミスタラの復刻版が海外に続き、日本でもPS3でミスタラ英雄戦記としてリリースされると知り、沸き立ちました。
海外版が1800円ほどと聞いていたので日本版が5%税込み3990円という価格設定に面食らいつつも、予約して買いました。
まずは最低難易度やパッド向けの快適操作や設定で慣らし、続いて相当に努力してゲーセン準拠の設定でノーコンクリアしました。
同じ難易度でも快適操作や設定にすると凄く簡単になるので、アーケード版は、その辺で損した部分が大きかったのかな、と。
ミスタラは 僕がノーコンクリア出来る数少ないベルトフロアなので、それなりに思い出深いゲームです。
段階式攻略法で最も苦労したのが、7面ボスです。魔法剣を使う事を閃くまで、毎回瀕死の状態だったのですよ。
それも一息ついて、他のキャラやルートも、と意気込んだのは良いのですが、あまりに難しすぎて頓挫しております。
少なくともドワーフなら、必殺技やスライディングを解禁すれば何とかなりそうですが。ドワーフは必殺技がないと弱いそうですし。
1回だけ兄と最低難易度で2人プレイした時は、聖職者というには戦士すぎるクレリックの雄姿に、2人して爆笑したものですよ。
また、日本語を喋る事にも突っ込まれましたが、もし今のカプコンがD&Dを出したら、ごっついキャラが英語を喋るんでしょうねぇ。
↓もうクレリックが戦士でいいんじゃないかな。
ドゥームとミスタラの2本を同時収録したPS3ソフトです。忠実な移植に加え、ゲームを快適に遊べる追加要素が豊富です。
VGFにおけるミスタラ攻略の目次です。
撃って隠れるガンシューの2作目です。ミスタラと同じく、前作と打って変わって遊びやすさや派手さ第一の作風となりました。
検索等で来て頂いたついでに、ご意見ご感想などを残して頂けると嬉しいですが、事前に三か条を一読ください。
当初、12月中旬にミスタラ、大晦日にPS3版のレビューを公開する予定でした。
ところが、後に原因がEBウイルスと判明する頭痛や高熱により寝たきりとなり、とてもレビューを作れる状態ではなくなったのです。
少し落ち着いた時に4日遅れで段階式攻略法3/3を公開しましたが、レビューを12月中に両方作るのはムリ!ゲー募録もムリ!
でもミスタラだけなら大晦日までに作れるかな、と考えつつも、大っぴらに12月公開とするとプレッシャーで体調が悪化する恐れが。
ただでさえ体調が不安定で、いつ治るのか分からなかったため、無難に無期限延期とさせて頂いた訳です。
幸いにも、1週間くらい前から体調が良くなってきたので、見込み通り大晦日に公開できて良かったです。
という訳でVGFでは初めて12月は月1回のみの更新となりました。今後のペースは体調や作業の進み具合と相談しつつ考えます。
レビューに関しては、体調不良によるブランクもあって、膨大な文章量に対して整合性を取るのが大変でした。
何度もテスト公開してスマホでもチェックしていた所、あからさまな矛盾が2つも見つかった時は、気が気では無かったです。
当然ながら、リングコマンドは正式名称ではありません。他所ならアイテムサークルとかサークルコマンドとか書いています。
ただ、そのようにサイトによって表記ゆれがあり、検索して直ぐ意味が分かったのがリングコマンドなので敢えて、そう表記しました。
「6/10 ビデオゲームの限界」は、ある意味では本レビューで最も書きたかった事です。まあ、異論はあるでしょうけどね。
6ボタンや2枚接続うんぬんの裏付けには、PS3版のギャラリーや公式フェイスブックを用いました。
特に6ボタンに関しては、 PS3版が出てから3年経つのに未だにネットに記載が無いため、なおのこと好都合でしたね。
ちなみに公開1時間前までは6ボタンの解説に表などを用いていませんでしたが、読み辛かったため急きょ用いました。
JVS規格も絡ませれば良かったかも知れませんが、情報不足かつ書いてある事が難しすぎて断念しました。
2017/03/16 「ダンジョンズ&ドラゴンズ ミスタラ英雄戦記」へのリンクを追加
2016/12/31 初公開